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AI研究 ノーベル賞が新時代に入った

読売新聞 / 2024年10月17日 5時0分

 今年のノーベル賞は、人工知能(AI)研究が席巻した。AI研究が社会や科学のあり方を大きく変えたことを印象づける授賞決定である。

 物理学賞は、カナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授らに決まった。脳の回路を模したコンピューターが自分で学習する深層学習(ディープラーニング)の手法を開発し、「AIのゴッドファーザー」と呼ばれる。

 この研究を基礎に、言語や画像を処理する生成AIの活用が広がった。その影響の大きさを考えれば、これまで受賞しなかったのは不思議にすら思える。

 ノーベル賞の自然科学部門は「生理学・医学」「物理学」「化学」の3分野に限られ、AIや情報科学の研究者は事実上、対象外だった。今回の選考委員会の決定は、画期的な転換と言えよう。

 化学賞には、ヒントン氏らが開発した深層学習を活用してたんぱく質の構造予測技術を開発した、英グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)らが選ばれた。

 たんぱく質は生き物の体を形作る重要な物質だが、その構造は複雑で、これまでは調べるのに数年かかっていた。ハサビス氏らのAI技術を使えば数分程度で構造が分かり、創薬や病気の研究が大きく進むことが期待されている。

 一方、AIは使い方次第で脅威にもなり得る。ヒントン氏は「人間より賢いシステムが生まれ、人を支配するのではないか」と警鐘を鳴らしてきた。授賞決定は、選考委のAIに対する懸念も反映していると受けとめるべきだ。

 新たな分野に光を当てようとする兆候は数年前からあった。2021年に真鍋淑郎博士が気候変動研究で物理学賞を受け、22年はスバンテ・ペーボ博士が古人類研究で生理学・医学賞となった。

 気候変動や人類学は、従来の3賞の枠組みには収まらない。近年は科学が複雑化し、分野横断的な研究が増えている。あえて伝統的な3賞の枠組みに当てはめる選考方法は、時代にそぐわなくなってきているのではないか。

 科学分野では3年連続で日本人の受賞はなかった。日本で学際的な新分野への対応が遅れていることと無縁ではないだろう。

 今月、東京工業大と東京医科歯科大が統合し「東京科学大」が発足した。こうした大胆な組織改革や学際研究の強化を急ぐべきだ。そうしないと、近い将来、ノーベル賞の受賞者数は大きく減っていくことは避けられない。

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