中国の軍事演習 武力の威嚇は容認できない
読売新聞 / 2024年10月17日 5時0分
武力による威嚇や心理的な揺さぶりを続けることで、台湾を屈服させることができると考えているのであれば、大きな間違いとなろう。
中国は東アジアの緊張を高める軍事的な威圧をただちにやめるべきだ。
中国軍が台湾本島を取り囲む形で大規模軍事演習を行った。2022年以降、同様の演習を繰り返している。今年は台湾の頼清徳政権が発足した5月以来となる。
今回は、前回より台湾本島に近い海空域にも演習区域が設定された。台湾周辺空域では、1日あたりで過去最多となる中国軍機の活動が確認された。
中国軍の報道官は大規模演習について、「『台湾独立』勢力を震え上がらせ、国家主権と国家の統一を守るための正当で必要な行動だ」と主張した。
頼総統は中台統一を拒否する立場で、先の演説でも「主権を堅持し、侵犯と
訓練内容として、「重要な港湾と地域の封鎖・制圧」を挙げた。演習地図に、総統府がある台北や、基隆、高雄、台中など港湾や空港を有する6都市を示し、その沖合に演習区域を設定した。
物資の輸送路を断つ能力を見せつけ、台湾社会の動揺を誘う狙いは明白である。これに対し、台湾軍は警戒・監視態勢を強化する一方、市民は日常生活を続けた。
中国は、威圧によって台湾の民意を対中融和に動かすことはできまい。かえって警戒感を強めさせることを自覚すべきだ。
今回の演習には、台湾侵攻の際に米軍の介入を阻止する中国側のシナリオの一端がうかがえる。
5月の演習時に確認されなかった空母「遼寧」の艦隊を台湾東部沖に配置したことだ。戦闘機などが約140回発着艦した。米軍への対処を想定したとみられる。
米国と日本は、今回の中国軍の部隊運用を詳細に分析し、必要に応じて防衛計画の見直しを進めることが欠かせない。
米国や欧州連合(EU)がこの演習への反対を表明し、日本も中国に懸念を伝えたのは当然だ。
中国は尖閣諸島や台湾周辺だけでなく、南シナ海でもフィリピンなど周辺国に対して挑発行為を繰り返している。
そうした横暴な振る舞いを続けていれば、国際社会における中国の評判は傷つき、国益を損なう結果を招くだろう。
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