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賃上げ・中小支援が急務…各党の財源確保策、説得力欠く

読売新聞 / 2024年10月17日 5時0分

[政策分析 24衆院選]<経済対策>

 衆院選を戦う与野党には、経済再生や社会保障、外交・安全保障など様々な分野の課題に対する処方箋をいかに示せるかが問われている。日本の現状を分析し、各党の公約を点検する。

 日本経済は、デフレから完全に脱却できるかどうかの正念場にある。

 物価下落が続くデフレ下では、企業の売り上げは伸びず、コスト削減で利益を確保するしかなかった。岸田前首相は「コストカット型経済」から「成長型経済」への転換を打ち出し、石破首相もその路線を引き継ぐ。それを確かなものにするための方策が問われるのが、今回の選挙だ。

 最近は物価高が進み、消費者物価指数など数字の上ではデフレではない状態となっている。ただ、主にエネルギー価格の高騰や円安による輸入物価の上昇など外的要因によるもので、成長型の経済への移行を反映したものとは言えない。

 個人消費が伸び、企業の売り上げが増えて、自然と物価が上がるという経済の好循環が伴って初めて、デフレ脱却がかなう。

 そのために不可欠なのが働く人の賃上げだ。今春闘で賃上げ率は5%を超え、33年ぶりの高水準だった。しかし、物価上昇の影響を差し引いた実質賃金は、6月に27か月ぶりに前年同月を上回ったものの、8月に再びマイナスに転落。賃金は物価上昇に追いつかず、消費は伸び悩んでいる。

 公約で、自民党や立憲民主党など各党は、最低賃金の引き上げを訴えた。立民や公明党、共産党は時給「1500円」の数字を掲げた。日本の最低賃金は国際的にみて低水準にある。その引き上げは非正規社員を含む多くの労働者に波及するため、極めて重要だ。

 ただ、大幅な引き上げは中小企業の経営には打撃となる。海外では、急激に引き上げたことが逆に雇用の悪化を招いた事例もある。最低賃金の引き上げは、中小企業の支援策とセットで行うことが欠かせない。

 中小企業が人件費を増やした場合、大手企業との取引で価格転嫁できるよう、強力な支援を行うべきだ。人手不足を補う省力化投資や、デジタル投資を強く後押しする施策も望まれる。

 雇用の7割を占める中小企業の着実な賃上げにつなげられるか、各党の具体策を注視したい。

 一方、デフレから脱却できれば、日本銀行の金融政策も正常化し、「金利のある世界」が本格化する。

 そこでは、国の借金である国債の利払い費が増えることが想定される。新型コロナウイルス対策で一段と悪化した国の財政を、早急に立て直す必要がある。

 だが、各党の公約からはそうした危機感は読み取れない。自民は「経済成長と財政健全化の両立」と記したが、道筋は不明確だ。

 立民は、これまでの消費税減税こそ封印したが、給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」(消費税還付制度)を目玉施策に掲げる。他の野党には消費税減税の主張が目立つ。

 ただ、そのための財源をどう確保するのか、各党の説明は説得力を欠く。

 今後も防衛力の強化や少子化対策などに、多くの予算を要する。国の財政を巡る国民の将来不安は、個人消費が伸びない一因ともされる。そうした問題への各党の認識も問いたい。(編集委員 佐々木達也)

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