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「安心の設計図」どう描く…給付と負担のセット、具体的な説明必要

読売新聞 / 2024年10月17日 21時57分

[政策分析 24衆院選]<社会保障>

 長寿化や少子化で膨らむ給付と負担と、深刻化する医療・福祉分野の人材不足――。

 将来不安が強まる中、持続可能で信頼できる「安心の設計図」を各党がどう描けるかが、社会保障分野では問われている。

 医療、介護、生活支援が同時に必要となる85歳以上が2036年に1000万人を超える一方、現役世代が急減する「85歳問題」。85歳以上は通院が困難となるため在宅医療のニーズが急増するが、診療所は一人開業が多く、開業医の平均年齢は既に60歳を超す。慢性的な病気を複数抱える患者を総合・継続的に診る「かかりつけ医」機能の制度整備も動き出したばかりだ。

 介護分野では、訪問介護職員の有効求人倍率が約14倍と断トツに高く、「お金があっても面倒をみてくれる人がいない」状況が現実のものとなりつつある。

 老後に向けて蓄えておいた資産が不足する「長生きリスク」への処方箋の一つは、自ら働いて、基礎年金より手厚い給付が得られる厚生年金に加入することだ。だが、短時間労働者の厚生年金への適用拡大は、勤務先の企業規模要件が残るなど道半ばにある。高齢期に働くと、厚生年金が減額される在職老齢年金の見直しも課題といえる。

 一方、社会保障制度に大きな影響を及ぼすのが少子化だ。23年の出生数は72・7万人で、24年には70万人を割る可能性もある。未婚の要因とされる非正規労働者の待遇改善や長時間労働の是正、子育て世帯への現金・現物給付や育児休業制度の拡充が急がれる。

 社会保障給付費は対GDP(国内総生産)比で2割を超え、社会保険料収入と税収だけでは賄えず、国債発行に頼る状態が続いている。将来世代にツケを残さぬよう、全世代が能力に応じて負担し、支え合うことが必要だ。少ない人手でも機能を維持できるよう、テクノロジーを戦略的に使うことも欠かせない。

 自民党は医療・介護・福祉分野の提供体制整備や処遇改善などを掲げるが、肝心の財源は公約に明記がない。住宅手当の創設などをうたう公明党も同様だ。

 子育て支援の財源について、政府は「子ども・子育て支援金」制度を26年度に創設することにしているが、本当に実現できるのか、子育て支援以外の財源はどうするのかを両党は明らかにする必要がある。

 立憲民主党は、低所得者の年金上乗せや子育て予算の倍増などを盛り込んだ。少子化対策の財源は、日本銀行の上場投資信託(ETF)の分配金を充てるとした。ただ、この案は先の通常国会では否決されている。立民以外の野党は、社会保障財源である消費税の減税や廃止を一斉に訴える一方、給付拡充や現役世代の負担軽減などの主張が目立つ。

 年金、医療、介護、子育て、雇用、生活保護など幅広い分野から成る社会保障においては、どんな社会保障観のもと、どんな給付と負担のセットで総合的に政策を考え、提示しているかが重要になる。各党には有権者の見極めに資するより具体的な説明が求められる。(編集委員 猪熊律子)

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