深圳男児刺殺1か月、「背景わからず不安」邦人動揺収まらず…学校付近は登校前から警官50人超が厳重警備
読売新聞 / 2024年10月18日 7時31分
18日で1か月となる中国広東省深圳市で起きた日本人男子児童(10)の刺殺事件を巡り、保護者らの動揺が収まらない。関係者によると、不景気の中で社会に不満を持ち日本人を狙った犯行との情報があるが、中国側は容疑者の男(44)の供述など詳細を公表しておらず、在留邦人はいらだちを募らせている。
男児が通っていた深圳日本人学校の校門付近では17日朝、登校前から50人超の警察官らが警戒した。警察犬を連れ、防弾チョッキを着て盾を持つ警官もおり、警察車両は赤色灯を回し巡回した。14日に登校を再開した同校が徒歩通学を原則禁じる中、保護者らと乗用車で登校する子供も多い。
同校に息子が通う日本人女性は「怖さが残っていたので、今の警備はありがたい」と語ったが、「事件の背景がわからず不安だ」とも漏らした。中国で日本人が被害者となる事件の背景には、SNSで多い反日的な言論があるとも指摘され、日本側は悪質な投稿の取り締まりを求めている。
事情を知る中国当局者に近い関係者によると、中国の景気減速も深圳の事件の背景にあったとみられるという。容疑者の男の居住地とされる広東省東莞市は中国有数の製造業の街で、早朝から街頭で日雇いの仕事を求める出稼ぎ労働者が多い。だが、3年前まで工場勤務だった男性(47)は「不景気で多くの工場がつぶれた。定職を得たいが、45歳までと年齢制限がある募集が多い」と嘆く。
先の関係者は「当局は、外国人の動揺を招く情報を公表すれば投資が減ると懸念している」と指摘する。江蘇省蘇州市で6月、日本人母子らが襲われた事件でも容疑者は無職の男で、日中関係筋によると、社会に不満を抱く市外の出身者とされるが、日本人を狙った犯行かどうかは非公表だ。
北京で17日、中国外務次官と会談した日本外務省の岩本桂一・領事局長によると、深圳の事件で中国側は「司法手続きにのっとり適切なタイミングで説明したい」との意向を示したが、情報の少なさは在留邦人や家族の不安に拍車をかける。広東省で日本人学校に子供を通わせる男性は「(犯行の)原因をはっきりさせるべきだ」と不満げだった。
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