「W杯女王」澤穂希が「現場復帰」する日は来るか、本人は「指導者としてはない」と断言するが…
読売新聞 / 2024年10月22日 10時0分
サッカー女子元日本代表で、2011年女子ワールドカップ(W杯)では主将としてチームを優勝に導いた澤穂希さんが、読売新聞ポッドキャスト「ピッチサイド 日本サッカーここだけの話」の公開収録に出演した。過去最強と評される現在の「なでしこジャパン」について、番組MCで元日本代表の槙野智章さんとトークし、澤さんは「ぜひ皆さんにもっともっと彼女のプレーを見てもらえたらいいな」と、期待する選手の名前をあげた。
しっかり準備をしておかないと
公開収録は、東京・丸の内の「みずほ丸の内タワー」にあるコラボレーションエリア「MIRAIS(ミライズ)」で行われた。
今年夏に開催されたパリ五輪で、なでしこは準々決勝でアメリカと対戦し、延長戦の末、0-1で惜敗。東京五輪に続き、2大会連続でベスト8という結果に終わった。金メダルはなでしこに勝利したアメリカが獲得した。
1次リーグでは、初戦で2023年W杯優勝国のスペインに1-2で敗れたが、2戦目のブラジルには、後半ロスタイムに2点を奪う大逆転で2-1の勝利。3戦目はナイジェリアに3-1で勝利し、1次リーグを2位で突破した。
パリ五輪のチームは、なでしこ経験者の多くが「歴代最強」と評価し、メダル獲得も期待されていた。
「最近のなでしこジャパンは海外組が多いので、練習から海外の選手と接しているので、海外選手を相手に慣れているという印象は感じます」。澤さんは現役当時との違いをそう語る。
外からチームを見ていて、チーム内の雰囲気に当時との違いはあるか?
「私たちの時は国内合宿も含めて密にやってたから、連携や連動の部分では『凝縮』されていたというか、チームのコンセプトとか、やりたいことが明確に分かっていたと思います。今は海外組が多いから(チームが)集まる期間が限られていて、(連携を)細かく合わせていくのは大変だなと感じますね」
当時のチームは、選手間のコミュニケーションが活発だったと澤さんは振り返る。「何か問題が起きたらすぐに解決したいから、食事中もみんなでその(問題の)話とか、私はボランチだったので、ボランチの人たち、あとサイドの人たちと本当にずっと話していました」
「何回も試合のビデオを見て、止めて、動かして、細かく。だからミーティングは選手だけで2時間とか余裕で費やしてた」。サッカーにおいてまったく同じ場面が訪れることはない。「だけど、似ている場面はある。(試合に出ていなくても)いつ、どこで試合に出るか分からないから、しっかり準備をしておかないと。自分がやるべきことを分かっているプロ意識が高い選手が多かったですね」
そういうミーティングの呼びかけ人は澤さん?
「いや、宮間(あや)とかです。サッカーの外も内も、(宮間さんは)周りが見えてるから」
期待の新世代
男子代表はW杯ベスト16の壁を乗り越えられていない。オリンピックは1968年メキシコ五輪の銅メダルまで遡る。一方、女子代表はW杯優勝を勝ち取って、オリンピックも銀メダルを獲得している。
「(2011年チームと)どうしても比べられちゃうからしんどいっていう選手もいるみたいです。私たちの優勝のインパクトが強すぎちゃうから、みんな葛藤というか、あるっていうのも聞きましたし」
澤さんが新しいなでしこジャパンで期待をかける選手は、パリ五輪のブラジル戦で約30メートルの決勝ゴールを決めた谷川萌々子選手(FCローゼンゴード)。
「判断がすごかったですよね。体もすごくしっかりしてて、攻守にわたってファイターというか、体をはれる。一人でもディフェンスできちゃう。初めてのオリンピックで、大きな舞台で結果を出せているのは伸びしろしかない。本当に楽しみなので、ぜひ皆さんにもっともっと彼女のプレーを見てもらえたらいいなと思っています」
一方で後輩たちに注文もつける。
「最後のアメリカ戦の守備は今までで一番良かったと思っていて。だけど、次の壁を乗り越えて上に行くには、正直厳しい意見ですけど、あれじゃ勝てないなって。どこかでリスクを抱えてでも、攻めないと勝てないとは感じましたよね」
現場復帰はあるか?
2011年の優勝メンバーが現場に戻ってくることを期待する声は多い。
「2011年のメンバーはまだ現役の選手が多いんですよ。みんなしぶといなって言って、みんな笑ってるんですけど。でもそれだけプロとして長くやれるには普段からの生活の仕方とか、すごくいいと思うので、もっともっと長く続けてほしい。2011年のメンバーの誰かが監督になってほしいなって思ってて。それを支えたいなとは思ってます」
現場に来てくださいという声があったら、もしかしたら?
「2011年のメンバーが監督になったときにぜひ一緒にやりたいなとは思っています。指導者としてはないですけど、関わる人としてはいたいかな」
プロフィル
澤穂希(さわ・ほまれ)
15歳で日本代表入りし、五輪に4度、W杯に6度出場。2011年W杯ドイツ大会での初優勝に貢献し、国際サッカー連盟(FIFA)女子年間最優秀選手にアジアで初めて選ばれた。なでしこジャパンとして国民栄誉賞も受賞。12年ロンドン五輪で日本女子サッカー史上初のメダルとなる銀メダル獲得。15年W杯カナダ大会準優勝にも貢献し、同年に現役を引退した。日本代表通算205試合の出場で83得点。1978年生まれ。東京都出身。
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