交通空白対策 安心できる地域の足確保を
読売新聞 / 2024年10月19日 5時0分
過疎化などに伴って、バスや鉄道を利用できない「交通空白」地域が増えている。官民が連携して、地域の足を確保する策を練ってほしい。
国土交通省は7月、交通空白の解消に向け、対策本部を設置した。来月には自治体や民間企業が連携を図るための組織を創設する。
地方では、人口減少を受け、鉄道の廃線や路線バスの減便が相次ぎ、タクシー不足も深刻だ。高齢化が進み、車を運転できない人が増えることも避けられない。
交通空白の問題を放置したままでは、地方創生を進めることも難しいだろう。日常生活を支える移動手段の確保は急務である。
個人が自家用車を使い有償で人を運ぶ「ライドシェア」は、海外で広く普及している。
日本では、安全性への懸念から一律の全面的な解禁には慎重論が強いが、日常生活に直接の影響が出ている地方については、自治体やNPO法人などが責任を持って運行を管理する「公共ライドシェア」の必要性が高まっている。
2006年の制度導入後、約600市町村にまで拡大した。
電話やLINEなどで依頼を受けた地域住民が、自宅や決められた乗車場所まで自家用車で迎えに行き、目的地に送り届ける。
自治体などが損害保険契約に加入し、事故の賠償金が支払われる仕組みだ。顔なじみの住民に送迎してもらう安心感も大きい。
課題はドライバーの確保だ。
新潟県村上市は、5000人が居住する市北部地域で昨年10月、公共ライドシェアを導入した。年間利用者は、のべ1500人と認知度は高いが、約20人いる登録ドライバーは高齢者が多く、配車依頼に応えられない事例がある。
一方、交通空白の対策が進んでいない自治体は、全国で2割弱にあたる300超もある。
自治体や郵便局、JAなどの地域組織や、地元の交通関連企業が緊密に連携することが重要だ。
北海道上士幌町では、郵便局の集配車が郵便物の集荷といった業務をしながら、住民を乗せて運ぶ貨客混載の実証実験が始まった。他の自治体でも参考になろう。
交通空白は過疎地にとどまらず、最近では地方都市でも夜間帯で起きている。地域のタクシー会社で共通の配車システムやアプリを導入するなど、運転手を効率的に活用していく必要がある。
政府は、当初予算で地方創生交付金の倍増を検討中だ。地域住民が安心して出かけられるよう、活用策を探ってもらいたい。
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