いかに国民を守るか、抑止力の具体的向上策が焦点
読売新聞 / 2024年10月19日 23時0分
[政策分析 24衆院選]<外交・安保>
衆院選公示前日の14日、中国が台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を強行した。「中国は台湾を代表する権利がない」という
中国は日本への圧力も強める。8月には軍用機の領空侵犯、9月にも空母の接続水域航行があった。どちらも初めてだ。徐々に既成事実を積み上げ、国際秩序の変更を試みる「サラミ戦術」との見方もある。
北朝鮮は弾道ミサイル発射を繰り返し、ロシアとの軍事協力を深めている。
ロシアのウクライナ侵略や、中東・イスラエル周辺での戦闘も収束の兆しが見えない。ウクライナを巡って日米欧などと中露が対立し、新興・途上国「グローバル・サウス」の取り込みを競う分断の構図が続く。
日本の安全保障環境がかつてなく厳しい中、いかに国民を守り、国益を確保するのか。外交・安保政策は衆院選の重要な論点だ。
紛争防止には抑止力の向上が欠かせない。政府は2022年に国家安全保障戦略を策定し、反撃能力の保有や防衛予算の大幅増を進めている。同盟国の米国やアジア、欧州の同志国との協力の緊密化が重要だ。同時に、中国と対話を重ねて「戦略的互恵関係」を具体化することも欠かせない。
自民党は公約で、中国・ロシアの「力による現状変更の試み」に警戒感を示し、防衛力の抜本的強化を掲げた。自衛官の採用難を踏まえ、「自衛官の給与面を含む処遇改善」も明記した。
石破首相の持論の日米地位協定改定や「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設は封印。「自由で開かれたインド太平洋」の推進に向け米国、豪州、韓国などとの連携を強調する。ただ、首相は地位協定改定を「必ずやる」とも述べ、発言の揺れが指摘される。
公明党は、専守防衛の下での防衛力強化や日米同盟の抑止力向上を主張。「核兵器の役割低減に関する首脳級会合」開催や核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加も掲げる。
立憲民主党は、日米同盟を基軸とした外交・安保政策や自衛官の処遇改善では自民と足並みをそろえるものの、「急増した防衛予算を精査し、防衛増税は行わない」と独自色を示す。
鳩山政権崩壊の原因となった米軍普天間飛行場の移設問題に関しては、前回衆院選と同様に「辺野古移設工事の中止」を明記した。地位協定見直しの再交渉を米国に求めるとも訴える。
日本維新の会は、国民の負担に頼らずに防衛費を国内総生産(GDP)の2%に増額し、「積極防衛能力」の強化を主張。紛争解決への国際司法裁判所の活用、拒否権廃止を含む国連安全保障理事会改革も唱える。
外交には常に、相手国がいる。高い理想を掲げつつ、現実主義的なアプローチで成果を出す。そのバランスと説得力の冷静な見極めが有権者に求められている。(編集委員室 内田明憲)
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