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能登大雨で行方不明、車には足滑らせ流される映像…32歳の誕生日迎えた姉へ「どこへ行ったのか」

読売新聞 / 2024年10月21日 11時32分

美紀さんが流されたとみられる川の先にある海岸沿いを歩く真さん(17日、能登町で)=武山克彦撮影

 石川県能登半島北部を襲った記録的大雨では、死者が14人に上ったなか、輪島市町野町の中山美紀さんだけ行方がわからず、捜索が続いている。21日に発生から1か月がたった。弟のしんさん(28)は「とにかくさみしい。それだけ」と語り、山道や川沿いを捜し歩いている。(輪島支局 武山克彦、珠洲通信部 成島翼)

 「あの日から全く心が落ち着かない。どこへ行ったのか」。美紀さんの32歳の誕生日だった今月17日、真さんは土砂が積み上がった川沿いを訪れ、手がかりを捜していた。

 輪島市の実家は正月の地震で全壊し、父親らと家族6人で応急仮設住宅に入居した。

 「行ってくるね!」。9月21日の朝、美紀さんはいつものように真さんに声をかけ、清掃員の職を得た穴水町に軽乗用車で向かった。雨脚が急に強くなり、大雨特別警報が出された。真さんが何度も電話をかけたが、つながらなかった。

 美紀さんの車は能登町の山道で見つかった。ドライブレコーダーには、車から出ようとした美紀さんが、足を滑らせて流される様子が映っていたという。大雨で仕事を切り上げ、帰宅する途中だったとみられる。

 幼い頃からいつも美紀さんと一緒だった。海も山もある町野地区は自然が遊び場。近くの川に入り、びしょぬれになった。大人になっても地元を離れず、毎月のように車で一緒に映画を見に出かけた。姉の作る野菜たっぷりのみそ汁はおいしかった。

 ささいなことで衝突したこともある。「卵かけごはんを食べたい」と言う美紀さんに卵を渡すと、「どうしようかな」となかなか口にしないため、「せっかく渡したのにどっちなんだ」と腹を立ててしまった。

 今はそんな日常がいとおしい。大人になってから、姉が1か月もいないことはなかった。「なんでこんなことになったんだろう」と振り返る日々だ。

 21日も午前8時半から警察が約15人態勢で美紀さんの捜索を行い、町野町の曽々木海岸付近で流木や砂浜をかき分けていた。真さんは「海まで流されてしまったかもしれない。ここまで捜してくれて、感謝だけでなく申し訳なさもある」と話すが、「一つでも手がかりを見つけてほしい」と率直な思いも語る。

 毎年姉に贈っていた誕生日ケーキは、今年は用意する気になれなかった。「きっとおなかがすいてるはず。たくさん食べさせてやりたい」。わずかでもいいから姉につながるものがないか、真さんは歩き続けている。

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