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全村避難の旧山古志、ニシキゴイと被災乗り越える…海外人気で高値取引「世界で光り続ける」

読売新聞 / 2024年10月23日 16時15分

池から揚げたニシキゴイを水槽に移す田中さん(18日、新潟県長岡市で)

 23日に発生20年となる新潟県中越地震で全村避難した旧山古志村(現新潟県長岡市)で、特産のニシキゴイの生産が被災を乗り越えて続いている。海外での人気が高まり高値で取引されるようになり、生産者は「中山間地を守る力になっている」と希望を見いだしている。(長岡支局 徳井観)

 険しい山に囲まれた山古志地域で18日、丸重養鯉ようり場の事務所に、オランダや南アフリカなど外国人バイヤー約10人が訪れていた。「ビューティフル」。赤や白の模様が美しいコイが水槽で泳ぐ姿に感嘆の息をもらした。

 オランダから来たステファン・コースターさん(53)は「大きさ、美しさが素晴らしい」と評価。同社代表の田中重雄さん(70)は「世界の人が認めてくれている」と目を細める。

 ニシキゴイは山古志地域などが発祥とされ、その姿から「泳ぐ宝石」と称され、1匹数千万円の値がつくものもある。同社では模様の掛け合わせを考えて親コイを交配させ、生まれてから3年前後育てて出荷。海外の富裕層の人気が高く、顧客の9割ほどが海外だという。

 「もう山古志には戻れない」。20年前の地震で田中さんはそう落ち込んだ。自宅は全壊し、約40面の池と5棟のハウス設備も全滅。約1万匹いたコイは徐々に弱り、約8割が死んだ。しかし「ここでやめたら先人に申し訳ない」と、無事だった親コイを広島県の同業者に託し、一から設備を再建した。

 販売再開にこぎつけたのは2008年。タイの常連客が最初に購入してくれたとき、思わず涙があふれた。英語が得意で外国人のバイヤーと交渉する長男の重嘉さん(44)ら3人の息子が大きな支えになり、海外での人気も背景に、昨年の売り上げは地震前の7倍に達した。「どん底からはい上がったことは人生の財産になった」と振り返る。

 山古志地域は避難指示が解除された後も人口が回復せず現在700人余りと20年間で3分の1に減った。だが、田中さんは、「ニシキゴイがある限り、山古志は世界の中で光り続ける」と語り、地元の伝統産業を守り続ける考えだ。

 ◆新潟県中越地震=2004年10月23日午後5時56分、中越地方を震源に発生し、最大震度7を観測。関連死含む68人が死亡、4805人が負傷し、住宅被害は12万1604棟に上った。上越新幹線で営業中の新幹線としては初となる脱線事故が発生、車中泊の被災者が発症した「エコノミークラス症候群」が注目された。

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