福井・女子中学生殺人の再審決定、裁判長が目撃証言の信用性を否定…「捜査機関が誘導」
読売新聞 / 2024年10月23日 11時50分
福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件で、名古屋高裁金沢支部は23日、殺人罪で懲役7年が確定し、服役した前川彰司さん(59)が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求を認め、再審開始を決定した。山田耕司裁判長は「捜査機関が誘導などの不当な働きかけを行い、うその関係者供述が形成された疑いが
確定判決では、前川さんは86年3月19日夜、福井市の市営住宅で、留守番中だった中学3年の女子生徒の顔や首を包丁で刺すなどして殺害したとされた。
前川さんは87年3月の逮捕後、一貫して否認。前川さんが殺害したことを示す直接的な証拠はなく、知人6人の「事件後に血の付いた前川さんを見た」とする証言が有罪の根拠となった。
第2次再審請求審で、6人のうち1人が「本当は前川さんを見ていない」とこれまでの説明を覆し、弁護団は、証言の撤回について「無罪を言い渡すべき新証拠」と主張していた。
山田裁判長は決定で、まず、「『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の鉄則に従う」と指摘した上で、この証言の信用性を検討した。
この知人が確定審で「事件の日に見ていた」と述べたテレビ番組の場面について、今回の再審請求審で検察から新たに開示された捜査報告書に、実際は当日に放送されていなかったと記されていたことに言及。この報告書を新証拠と位置付け、「警察の誘導により、ありもしない体験が作り出された」とした。
検察は確定審段階からその場面が放送されていないことを知りながら、明らかにしてこなかったとし、「不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったと推認される」と言及。「不誠実で罪深い不正行為」と検察を批判した。
その上で、この知人の証言について、確定審から主要部分に変遷があるとし、「有罪の根拠とするほど間違いなく信用できる証拠とはならない」と判断した。
さらに別の知人についても、自身の覚醒剤事件の刑を軽くするためうその供述を行い、他の知人らも迎合した可能性があると指摘。「新旧証拠を総合すると、犯人であるとの合理的な疑いを超える程度の立証がなされたと認められない」と結論付けた。
確定審では、福井地裁が無罪としたが、高裁金沢支部が逆転有罪を言い渡した。刑事責任能力については、心神耗弱状態だったと判断され、97年に最高裁で確定。服役後の第1次再審請求で、2011年に再審開始決定が出たが、その後、取り消され、前川さんは22年10月、第2次再審請求を申し立てていた。
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