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「再審の扉」再び開く、逮捕から37年否認し続けた前川彰司さん…袴田巌さん無罪確定「追い風」

読売新聞 / 2024年10月23日 12時13分

再審開始決定を受け、弁護団と記者会見に臨む前川彰司さん(右)(23日午前、金沢市で)=桐山弘太撮影

 逮捕から37年、再審への扉が再び開いた。福井市の女子中学生殺害事件で前川彰司さん(59)の再審開始を認めた23日の名古屋高裁金沢支部決定。捜査段階から一貫して否認してきた前川さんは「とりあえず良かった。ほっとしています」と安堵あんどの表情を浮かべた。一方、2011年に出た再審開始決定は、その後取り消されており、「闘いはまだ続く」と気を引き締めた。

 「再審開始」。23日午前10時過ぎ、高裁金沢支部前で弁護団の1人が、そう書かれた幕を掲げた。まもなく前川さんが手を上げて裁判所の建物から出てくると、集まった40人ほどの支援者から「おめでとう」「良かった」と歓声が上がり、拍手が起こった。

 前川さんは報道陣の取材に、再審開始の決定を喜びつつ、「浮かれるわけにはいかない」と繰り返した。

        ◇

 前川さんは1990年に福井地裁で無罪判決を受けたものの逆転で有罪となり、懲役7年が確定して服役した。出所後の2011年に高裁金沢支部で再審開始決定を受けたが、13年に名古屋高裁で取り消された。前川さんは「絶望感で心が重かった」と振り返り、取り消された後に食べたうどんは味がしなかったという。

 14年に最高裁も取り消しを支持。心が折れ、精神的に不安定になった。就寝前、わけもなく涙が出るようになり、「再び棄却されるのが怖い」と、2度目の請求に踏み出せなかった。

 背中を押したのは、逮捕直後から弁護団を率いた佐藤辰弥弁護士の存在だ。

 佐藤弁護士は、福井地裁での無罪判決後、前川さんを新潟県の実家に招き、母親の手料理でもてなすなど、公私にわたり寄り添ってきた。しかし、難病で22年6月に70歳で亡くなった。

 前川さんは、四十九日に福井市内の佐藤弁護士の自宅を訪問。遺影に手を合わせると、自然と涙が出た。「お世話になりました」と感謝の気持ちを伝えると、「勇気を持って再審請求をしなさい」と返ってきたように感じた。

 気持ちが奮い立ち、訃報ふほうから4か月後の22年10月、再び再審請求を申し立てた。それから2年。「佐藤さんも天国で弁護してくれているはず」と思いをはせる。

 前川さんは、再審無罪が確定した袴田巌さん(88)、姉のひで子さん(91)とも交流を重ねてきた。先月26日には静岡地裁に足を運んで無罪判決の瞬間を目の当たりにし、「追い風になる」と勇気づけられたという。

 袴田さんに続き無罪判決を勝ち取ることが、自身の潔白を証明するのはもちろん、再審制度の改正にもつながると信じ、決定前には「再審へのか細い道を広げるんだ」と意気込んでいた。

        ◇

 ずっと無罪を信じてくれた父の礼三さん(91)は2年前から、福井市内の福祉施設に入居している。

 前川さんは週2回ほど会いに行き、甘いものが好きだという礼三さんにチョコレートや駄菓子を差し入れる。北陸新幹線が福井県まで延伸された今年3月には、「福井駅の駅舎を見に行こう」と車で連れ出した。

 礼三さんは決定前の取材に、「とても優しい子。今度こそ正義が天に届くと信じている」と話していた。足が悪く、23日は高裁金沢支部に行けず、施設で前川さんからの連絡を待つ。

 再審開始が認められた前川さんは語った。「父親には真っ先に電話して知らせたい。『再審の扉が開いたよ』と」

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