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[プレーバック応氏杯…1]前夜祭で対局者のあいさつなし、昼食は“呉越同舟”…「国際棋戦ならでは」随所に

読売新聞 / 2024年10月24日 11時30分

「応氏杯世界選手権」で優勝し、集まった中国のファンらに祝福される一力遼棋聖(右端)(9月8日、中国・上海で)=大原一郎撮影

 一力遼棋聖が中国で行われた「応氏杯世界選手権」で、中国の謝科九段を破り、日本の棋士として19年ぶりに主要な国際棋戦を制した。優勝を決めた9月8日の決勝五番勝負第3局の舞台裏をはじめ、歴史的なシリーズを振り返る。(文化部 江口武志)

 同行取材した第3局の対局会場は、中国・上海市の中心地から車で約30分ほど離れた郊外にあるホテルだった。そんな会場にもかかわらず、一力棋聖の地元ファンらがホテルのフロント前で終局を待ち、100人ほどが押し寄せた。

 一力棋聖の先を読む精度の高さは有名で、中国では「遼神」というニックネームがつけられている。優勝者となった一力棋聖は、ファンから渡された色紙や扇子に次々と揮毫(きごう)したり、プレゼントを受け取ったりしていた。

 日本以上のファンの熱狂ぶりだけでなく、「国際棋戦ならでは」といえる場面が随所に見られた。

 第3局の激戦が続く中、当日の午後4時頃(現地時間)、ホテル内に設けられた中国側の検討室から、謝九段の優勢を確信し、歓声が上がった。集まった著名な棋士ら約20人の中には、1980年代の日中対抗の棋戦で活躍し、「鉄のゴールキーパー」の異名で知られた聶衛平(じょうえいへい)九段や、世界的な強豪の辜梓豪(こしごう)九段もいた。

 対照的に、隣接する日本側の検討室は静寂に包まれた。日本選手団団長の孔令文七段は「国際戦は、互いの検討室の声量で形勢が分かるんです」と話した。その後、一力棋聖が形勢を逆転すると、にわかに盛り上がりをみせた。

 国際棋戦ならではと言えば、日本と中国の“慣習”の違いも含まれるだろう。対局前日に開幕の式典や前夜祭が行われるのは、日本と同じだ。日本では両対局者が意気込みなどを語るが、応氏杯では終始、運営側の出席者たちのあいさつなどで占められ、対局者が発言するタイミングがなかった。

 さらに驚きだったのが昼食の時間だ。日本の棋戦では対局者に気を使わせないよう、別室で食事をしてもらうが、応氏杯では両対局者が同じ部屋で昼食をとったのだ。一力棋聖は「気にしないようにしていました」と話したが、ちょっとしたアクシデントも起こった。昼食時間は30分間しかないが、食事の提供が約10分も遅れ、両対局者を心配させたという。

 終局後のファン対応や取材が一段落した一力棋聖が、ホテル内の食事会場を訪れると、そこで待っていたのは、扇子へのサインを求める謝九段だった。同席した一力棋聖の師匠、宋光復九段によると、2人は互いに健闘をたたえ合っていたという。両者だけが共有できる強い絆が生まれたのだろう。

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