中3殺害で再審 揺れる司法判断が示す課題
読売新聞 / 2024年10月24日 5時0分
事件から38年を経て、今なお有罪か無罪かの間で司法の判断が揺れている。再審制度が抱える問題点が、改めて鮮明になったと言えよう。
福井市で1986年に起きた女子中学3年生殺害事件で名古屋高裁金沢支部は、殺人罪で懲役7年が確定して服役した前川彰司さんの、再審開始を決定した。前川さんは一貫して無罪を訴え、裁判のやり直しを求めていた。
前川さんの裁判は異例の経緯をたどった。当初は1審で無罪だったものの2審で逆転有罪となり、最高裁でこれが確定した。明確な物証はなく、知人らの「事件後に血の付いた前川さんを見た」とする証言が有罪の根拠とされた。
再審でも、裁判所は一度開始を認めたが、検察の不服申し立てを受けて取り消し、今回2度目の請求で再び再審開始決定が出た。逮捕時21歳の前川さんは、今では59歳となり、服役も終えている。
検察が今回も不服を申し立てれば、裁判はさらに続くことになる。これだけ長い時間をかけても、有罪か無罪かを決められない現行の制度には明らかに不備がある。
高裁は有罪の根拠となった知人らの証言について「警察が誘導した可能性がある」と判断した。犯人逮捕への焦りが強引な捜査を生んだのなら、到底許されない。
検察の姿勢にも問題があった。知人らの証言と食い違う捜査資料があるのに、裁判に不利な影響が出るのを懸念してか、当初は裁判に提出せず、前川さんの有罪立証を続けたという。高裁は「不誠実で罪深い不正」だと批判した。
1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件では、捜査機関による証拠の
再審は、証拠開示の義務が法的に定められていない。開示に消極的な検察の姿勢は、これまでも問題視されてきた。
検察は、公権力を使って集めた証拠は公共財だということを改めて認識すべきだ。公正な再審が行われるよう、証拠開示のルールを明確にする必要がある。
審理の長期化を防ぐため、再審開始決定に対する検察の不服申し立て制度も見直すべきだろう。
冤罪は、無実の人の人生を狂わせるだけでなく、真犯人を野放しにすることにもなる。捜査手法と再審制度の改革が急務だ。
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