来年の春闘 中小の賃上げを後押ししたい
読売新聞 / 2024年10月26日 5時0分
物価高に苦しむ国民生活を安定させるには、賃上げの波を中小企業に広げていく必要がある。労使が認識を共有し、さらに政府側も中小企業への支援策を講じることが大切だ。
連合は、2025年の春闘で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給分を合わせ、全体では「5%以上」、中小については、「6%以上」の賃上げを求める基本構想をまとめた。
コロナ禍での供給制約やロシアのウクライナ侵略でエネルギー価格が高騰するなどし、22年春から物価高が続いている。
苦しい家計を踏まえ、23年の春闘要求は「5%程度」、24年は「5%以上」に設定した結果、今年の賃上げ率は、33年ぶりの高水準となる5・10%となった。
だが、物価上昇に賃上げが追いつかず、物価の影響を反映した実質賃金は22年4月から今年5月まで26か月連続でマイナスだった。今夏には一時、プラスとなったが8月は再びマイナスに転じた。
長引く物価高で家計の節約志向が強まっており、個人消費が弱い。日本経済はデフレから完全脱却できるかどうか正念場にある。労働組合は強い意志を持ち、経営側との交渉に臨まねばならない。
雇用の7割を占める中小企業の賃上げは遅れ、大企業との格差が広がる。連合が、中小企業の要求を1ポイント上乗せしたのは、格差拡大への危機感があるのだろう。
中小企業は、大手との取引で、コスト上昇分の価格転嫁が進まず、賃上げの原資が乏しい。
中小企業庁の調査によると、人件費の上昇を一部でも価格転嫁できた中小企業は6割弱にとどまった。4分の1は、全く転嫁できなかったと回答したという。
原材料費の上昇分は転嫁をしやすくなっているものの、人件費については依然として、認めない大手企業が多い。政府は、適正な取引に向けて、さらに監視を強めていってもらいたい。
日本経済の底上げには、最低賃金の引き上げも重要だ。衆院選では、多くの政党が「1500円」などと訴えるが説得力を欠く。
自民は、20年代に実現することを掲げた。しかし、極めて高水準の引き上げを毎年、続ける必要がある。そのための具体的な方策を示さず、スローガンにとどまっているのでは有権者に響くまい。
最低賃金近くで働く人が多い中小企業に対して、政府が人手不足を補う省力化やデジタル化を促す投資を支援し、賃上げ余力を高める施策を工夫していくべきだ。
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