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衆院選自公惨敗 長期政権の驕りが不信招いた

読売新聞 / 2024年10月28日 5時0分

◆国政の停滞は避けねばならない◆

 自民、公明の与党が衆院選で惨敗し、過半数を割り込んだ。

 今後、一部の野党の協力を得て、引き続き自公が政権を担い続けられるのか。あるいは、立憲民主党を中心とした野党勢力が政権交代を起こせるのか。政局は一気に流動化する情勢となった。

 また、「自公で過半数」を勝敗ラインに設定していた石破首相の進退も焦点となる。

 政局の流動化は確実

 第50回衆院選が開票された。

 自公は、2012年の政権復帰以降、経験したことのない逆風にさらされた。大幅な議席減は、政治とカネの問題に象徴される、長期政権のおごりや緩みに対する国民の不信感を反映した結果と言えるのではないか。

 一方、多くの野党は議席を増やしたが、理念や基本政策の異なる各党で協力できるかは見通せない。自公、立民それぞれが過半数確保に向け、多数派工作を繰り広げることになりそうだ。

 与野党の勢力が伯仲することで、予算案や法案を巡る攻防が激化して政策遂行が遅れる事態が懸念される。実際、07~08年の福田内閣当時は、野党が国会運営を主導し、国政が停滞した。

 今後、政権の枠組みを巡って与野党が駆け引きを繰り広げ、混乱が長引く可能性もある。山積する内外の難題に適切に対応できるのか。与野党ともに大きな責任を負うことになった。

 今回の衆院選は異例ずくめだった。石破政権が内閣発足直後の「ご祝儀相場」を当て込み、戦後最短での衆院解散に踏み切った。

 だが、自民党は、政治資金問題を抱えた前議員らの処遇を巡り、原則として全員を公認する方針が批判されると、非公認を次々と増やし、定見のなさを露呈した。

 選挙戦の終盤には、非公認となった候補が代表を務める党支部に対し、党本部が公認候補向けと同額の2000万円を支給していたことも発覚し、混乱を広げた。執行部の失態と言うほかない。

 自民が苦戦した背景には、「岩盤」と呼ばれた保守層の支持が離れたこともあるのではないか。

 岸田前首相が昨年、性的少数者(LGBT)理解増進法の成立に急にかじを切ったことや、総裁選での選択的夫婦別姓の議論に反発する支持者は多かった。

 こうした政策に反対してきた参政党や、政治団体・日本保守党が一定の支持を集めたのは、自民に不満を持つ保守層を引きつけることに成功したからだろう。既成政党に対する不信感が、新興勢力を勢いづけている側面もある。

 現実的な主張が奏功か

 先月、15年ぶりに党首が交代した公明も厳しい選挙戦となった。小選挙区選に初めて挑戦した石井新代表が落選したのは、支持母体の創価学会員の高齢化が影響しているとされる。

 一方、立民の伸長は、自民の「金権体質」を争点化する手法が奏功したことが一因だ。

 また、野田代表は、仮に政権交代が実現したとしても、現在の安全保障政策をおおむね継承する考えを示したほか、原子力発電を含むエネルギー政策について、党の綱領で定めた「原発ゼロ」にこだわらない方針を強調した。

 こうした現実的な主張が有権者に安心感を与えたようだ。

 国民民主党も躍進した。玉木代表が「手取りを増やす」と主張して、「生活重視」の姿勢をとったことが、特に若い世代の支持拡大につながったのだろう。

 日本維新の会が伸び悩んだのは、大阪・関西万博の会場建設費が想定以上に膨らんだことや、推薦した前兵庫県知事のパワハラ疑惑が影響したとみられる。

 他方、選挙戦で政策論争が深まらなかったのは残念だ。

 課題を蔑ろにするな

 物価高を上回る賃上げをどうやって定着させていくかは喫緊の課題である。社会保障制度を持続可能な仕組みとしていくにはどうすればよいか。急速に進む人口減少への対策も待ったなしだ。

 ウクライナ戦争や中東の紛争が長期化し、国際情勢は激変している。先進7か国(G7)の一角を占める日本は外交力を発揮し、国際社会の安定に貢献すべきだ。

 日本周辺の安全保障環境はかつてないほど悪化している。防衛力の強化はもとより、日米同盟を深化させるとともに、友好国を増やしていく必要がある。

 野党の選挙戦術もあって、政治とカネの問題が焦点となったのはやむを得ないとしても、国政の課題をないがしろにするような事態は避けなければならない。

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