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スマホ視聴のモヤモヤにNHK会長「ネットで言われているのは誤情報、ボタン押したら契約なんてことはない」

読売新聞 / 2024年11月2日 7時2分

東京・渋谷のNHK放送センター

 来年10月から、テレビを持たない人でも、スマートフォンなどによりNHKの地上波番組が視聴できるようになるが、その際に必要なのがテレビ同様の受信契約。現行の地上契約と同額の月額1100円とされ、NHKは概要を2024~26年度経営計画の修正案に盛り込み、現在、視聴者から意見を募っている。ところが、契約がどの段階で成立するかなど、スマホユーザーが気になるポイントは、公表資料からは今ひとつ判然としない。新サービスの狙いも含め、改めて取材を進めてみた。(文化部 旗本浩二)

スマホ持ってるだけでは課金されず

 新サービスは、5月に成立した改正放送法に基づくもの。総合テレビとEテレの番組の同時配信、見逃し配信(原則放送から1週間)、さらに「NHKニュースウェブ」などの文字ニュースをはじめとする番組関連情報の配信を、放送と同じ必須業務とし、ネットでも放送と同等の内容を提供することが義務づけられる。

 あくまでテレビを持たない人が対象で、既にテレビの受信契約を結んでいれば追加負担は発生しない。また、ネット利用者の中には「スマホを持っているだけで課金されるのか?」と誤解する人も少なくないが、単にスマホやパソコンがあるだけでは契約対象とはならない。

 公表資料とは別に記者向けに配布された資料によると、利用希望者がNHKのサイトやアプリを開くと、視聴意思や受信契約が必要になることを確認するメッセージが現れる。それに同意すると、個人情報の登録などが求められる。その後、一定期間登録などを行わないと、再びメッセージが表示されるという。

誤受信防止と言いながら…

 この資料の中に気になる注釈がついていた。視聴意思を確認するメッセージが表示された際、それを「確認(押下等)」、つまりタップまたはクリックすると、その時点で「契約締結義務も発生」とされているのだ。

 契約締結義務がいつ発生するかについて、NHKはこれまで「スマホの場合はアプリを導入し、IDを取得してご覧になる人は、受信をしたいという意思があると思って契約をしてもらう」(6月の定例記者会見で稲葉延雄会長)、「例えばアプリのダウンロード、あるいはIDの取得などの一定の操作を行って配信を受け始めた方を対象として」(5月の定例記者会見で小池英夫専務理事)と説明してきた。

 一般のネットショッピングでは、最終的にクレジットカード番号など個人情報を打ち込んだ時点で購入手続きが完了するはずだ。それと比べると、ずいぶん早い段階で契約締結義務が発生するかのようだ。改正放送法は、ネットユーザーが誤って番組等を受信してしまうことを防ぐ措置を求めており、その意味での確認メッセージと位置付けられる。しかし、とりわけスマホの場合、誤ってディスプレーに触れてしまうケースも考えられる。そうなると、いくら誤受信防止措置と主張しても、実際には、契約したくないのに契約してしまうという不本意な結果を招くことにもなりかねない。

確認メッセージ押すとスマホがテレビに“変身”

 それなのに確認メッセージのタップやクリック時が、なぜ契約締結義務の発生時期となるのか。これは来年10月から施行される改正放送法64条に由来している。同条には「次の各号のいずれかに該当する者は(中略)協会と受信契約を締結しなければならない」とあり、具体的には「特定受信設備を設置した者」「特定必要的配信の受信を開始した者」が挙げられている。「特定受信設備」とはテレビのことで、ネット視聴に関しては後段が関わってくる。つまり、スマホなどによりNHKの番組等の「受信を開始」した時点で契約義務が生じるという規定だ。

 テレビは放送専用の受信機だが、スマホなどはそうでない。電話にも使うし、ネット経由で様々な検索やサイト閲覧、SNSの利用などにも使われ、専らテレビ番組を見るための機械だとは誰も思うまい。それをNHKの受信契約に結びつけるためのひと手間が、確認メッセージへの応諾で、それにより「受信を開始」したとみなされてスマホなどがテレビに“変身”するというわけだ。まだ検討段階ながら、この過程をできるだけ分かりやすく示そうと試みたのが記者向け資料のようだ。

誤ってタップ…否定できず

 10月16日の定例記者会見では担当者がこう説明した。「資料にそう書いたのは、その時点で受信機の設置ということがあれば、そこがスタート地点だというルールをお示ししたかった。最終的にはきちんと理解した上で契約していただく」

 とはいえ、大災害や大事故のような緊急時には、ニュースなどの番組の同時配信が契約の有無にかかわらず自由に見られるようになる。その際に確認メッセージが画面上に浮かび上がるようなことがあれば、誤って触れてしまう恐れは否定できない。この点について、担当者は「まだ検討中であって、具体化にあたっては、誤受信防止に対する(視聴者の)意見を踏まえながら、受信料としてふさわしい制度をこれから考えていく。国民の皆様に誤解が生じないようにやっていくことが非常に大事」とした。

 実際には、タップやクリックで即契約とはならないとされるが、何より重要なのは確認メッセージの具体的な文言だろう。また、万が一、間違って押した場合の救済ルートも不可欠だ。では、一度契約して利用した後の解約方法はどうなるのだろう。テレビの場合、廃棄したり、故障したりしたことを届け出れば解約できる。スマホでは、例えばアプリをアンインストールすることが考えられるが、それをNHK側に証明するのは面倒だ。例えば「解約ボタン」のようなものを作ってもらうのも一策かもしれないが、いずれにしろ、解約方法も含め、視聴者の十分な理解が得られる手段であることが求められる。その意味では、視聴者から意見を募集するにあたり、現状の考え方を示したのは、受信料を負担する国民に対する説明責任の全うが必須の公共放送として当然の姿勢だ。

利用見込みは1年半で3万6000件

 テレビを設置していない人を対象に実施した「NHKのインターネットサービスの利用意向の有無」に関するアンケート調査や、契約者向けの動画配信サービス「NHKプラス」の普及具合を基に、NHKは、新サービスの利用件数は、来年10月にスタート以降、26年度末までに約3万6000件を見込む。新サービスの対象となるテレビのない世帯(故障を含む)が約400万件であることからすると、かなり少ない見積もりだが、想定されているのは、テレビをチューナーレステレビなどに切り替えた際に新サービスに移行し、そのまま契約を続ける人による利用だという。確かにそれだと、劇的に契約件数が増えるとは考えにくいだろう。

 新サービスについてネットの世界では、「無理やり契約させようとしている」など様々な声が飛び交っているが、実際にはNHKはこうした懸念を解消する方針で検討を進めている。記者会見の最後に稲葉会長がこう強調した。「これは受信料制度の問題でもなんでもない。むしろネット社会の問題点だ。(何かあると)話がばっと広がってハレーションが起きる。でも本当のところは、ボタンを押したからといってそこで契約が結ばれ、なかなか解約できないなんてことは現実性として全くない。今後の仕上がりの様子を見ていただきたい。ネットで今言われていることは、誤情報だということです」

 経営計画修正案への意見募集は11月7日まで。新サービスの詳細をNHKが決める参考にもなるので、気になる方は提言してみてはどうだろう。

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