秋の読書月間 心静かに本と向き合う時間を
読売新聞 / 2024年10月30日 5時0分
秋も深まり、心静かに本のページをめくりたくなる季節だ。書店に足を運び、予期せぬ一冊との出会いを楽しみたい。
「秋の読書推進月間」が始まった。期間中は、作家を招いて本の魅力を伝えるイベントなどが各地で行われる。普段あまり読書をしない人も、本に興味を持つきっかけにしてほしい。
2023年度の文化庁の調査によると、1か月に読む本の冊数は「読まない」が全体の6割を超えた。読書量が「減っている」と答えた人も7割近くに上った。
スマートフォンなどの情報機器の利用に時間を取られることが大きな要因だという。
書店の数も全国的に減っている。地域に書店が一つもない自治体は4分の1を超えた。気軽に立ち寄れる街の書店を、どう守っていくかが課題となっている。
書店には、様々なジャンルの本が並び、思いがけず良書に巡りあう瞬間がある。偶然手にした一冊が、その後の人生に大きな影響を与えることもある。
近年は、美術作品のギャラリーやカフェを併設するなど、各地に個性的な店が広がっている。地元の歴史や自然を紹介する本や、子供向けの絵本を集めるなど、選書に工夫を凝らした店も目立つ。
作家のトークショーや読書会などの取り組みが奏功し、地域の文化拠点として、書店の価値を見直す機運が少しずつ高まっている。自分の好みに合った書店を探し、街を歩くのも楽しいだろう。
経済産業省は今年、書店の経営環境を調査した。その結果、売り上げに占める書店の利益が少ない点や、ポイント付与、送料無料などのサービスを行うオンライン書店との競争に苦しんでいる点などが、課題として浮上した。
公共図書館が人気のある新刊本を複数購入して、多くの人に貸し出している現状も、書店の経営を圧迫する一因になっているとする声があったという。
書店の経営や商慣行の改善に向け、国は多角的に支援すべきだ。書店の利益率を高める工夫も必要だろう。書店側が自ら進んで、魅力ある店づくりに努めなければならないことは言うまでもない。
時に利害が対立する公共図書館とも連携を深め、読書環境の整備につなげる必要がある。
経産省は本について、知識を得るために重要だと捉え、その流通が滞れば、国の存立基盤や国際競争力に影響を及ぼしかねないと指摘する。そうした危機感を社会全体で共有することが大切だ。
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