「女性社長」過去最多の65万人、14年間で3倍 東京都よりも沖縄県、山梨県の女性社長率が高いのはなぜ?
J-CASTニュース / 2024年10月29日 18時22分
女性社長が増えている(写真はイメージ)
女性活躍推進が叫ばれるなか、女性社長が人数、割合ともに過去最高の勢いで増えている。
東京商工リサーチが2024年10月22日に発表した「第13回『全国女性社長』調査」によると、2024年の女性社長は全国で約65万人、14年間で3倍に増えた。
女性経営者が増えることは働く女性に元気を与えてくれるが、今後も増え続けるだろうか。そこに課題はないのか。調査担当者に聞いた。
全国最多の沖縄県では、社長の5人に1人が女性
調査は、東京商工リサーチが保有する約425万社の経営者情報(個人企業を含む)から女性社長(病院、生協などの理事長も含む)を抽出、分析した。
2024年の全国の女性社長は64万9262人(前年比6.0%増)。女性社長率(全社長数に対する女性社長の割合)も15.2%で、初めて15%を超えた。調査を開始した2010年の21万2153人から、14年間で3倍超に増えた【図表1】。
都道府県別の女性社長数は、最多が東京都。次いで大阪府、神奈川県、愛知県、福岡県と、上位5位まで大都市圏が並ぶ。興味深いのは都道府県別の女性社長率だ。最高が沖縄県(20.6%)で唯一、2割を超えた。沖縄県では社長の5人に1人が女性なのだ。
以下、山梨県(17.4%)、東京都(17.2%)、茨城県(17.0%)、大阪府(16.8%)などの順【図表2】。
ところで、女性社長が多い業界はどこだろうか。【図表3】が産業別の女性社長数・女性社長率だが、これをみると、ほぼ半数の約32万人を「サービス業他」が占めている。喫茶店や食堂など開業の敷居が低い飲食業のほか、美容業やエステティック業など女性が活躍しやすい業種が目立つ。
次に多いのが約10万人の不動産業だ。女性社長率が25.1%と最も高く、社長の4人に1人が女性だ。
一方、女性社長率が最も低いのが建設業(5.5%)。このほか農・林・漁・鉱業(8.2%)、運輸業(9.4%)の順で低く、一般的に男性労働者が従事するイメージが強い業界では、経営者の女性進出も低調な傾向をみせる。
美容、飲食、介護など生活関連業が多い沖縄、山梨、茨城県
J‐CASTニュースBiz編集部は、東京商工リサーチ情報本部の調査担当者に話を聞いた。
――調査開始以来、右肩上がりに女性社長の人数と割合が伸びています。日本社会に女性活躍の動きが浸透してきた喜ばしい証とみられますが、この伸長の背景に課題や問題点はないでしょうか。
たとえば、中小零細企業の後継者難が深刻になり、男性社長の引退や死亡後、やむを得ず奧さんや娘さんが社長になっているケースなどです。
調査担当者 女性社長の増加は、女性活躍推進策が功を奏した結果と考えられます。一例として、官民による女性への起業支援が挙げられます。伸長自体の背景には特に問題を感じておりません。事業承継も後継者のなり手として社会課題の解決に寄与しているものと考えます。
――日本経済の面から、女性社長がこれだけ多くなるメリットにはどんなことが考えられますか。
調査担当者 女性目線での商品開発などでマーケットの活性化が期待できます。また、事業承継の担い手となる選択肢の幅が広がり、後継者難の緩和を期待できます。
――都道府県別の女性社長率の上位ランキングが非常に興味深いです。東京都などの大都会は別にして、沖縄、山梨、茨城県が上位4位にランクインしています。それぞれどういう地元の事情・背景があるのでしょうか。
沖縄県は、よく観光業が盛んだから女性も起業しやすい店が多いなどといわれますが、南国特有の女性が大らかで、面倒見がよく、経営者に向いた県民性といった側面は考えらないでしょうか。4位の茨城県も、群馬県と並び北関東特有の「カカア天下」の県民性が知られています。
調査担当者 都道府県別に女性社長の産業別構成比をみたところ、上位の県は「サービス業他」の構成比が全国(49.4%)より高く、特に沖縄、山梨、茨城の3県は60%を超えています。「サービス業他」には美容や飲食、介護など生活関連から福祉まで幅広い業種が含まれ、女性が事業を手掛けるハードルが低い産業です。
ほかに上位10位に入った大分県、奈良県、広島県は、沖縄県ほど観光需要が高くなくとも、地域住民の需要が手堅い環境にあるのかもしれません。加えて、ご指摘のような県民性や地域性が作用している可能性はありますが、踏み込んだ分析は行っておりませんのでコメントは控えさせていただきます。
「不動産業」に女性社長が多いのはなぜ
――業種別にみると、女性社長率が最も高いのは飲食店のママや女将さん、美容院経営などが含まれる「サービス業他」ではないかと思っていましたが、意外にも「不動産業」でした。これは、どういう理由からですか。
調査担当者 「不動産業」の中には土地や建物を賃貸する不動産賃貸業があり、資産管理会社としての性格が強い企業を含みます。富裕層や経営者の女性親族がこうした企業の代表者に就き、「不動産業」の女性社長数を押し上げている側面があります。
――なるほど。ところで、年齢別の調査では情報通信業の58歳がもっとも低いとあります。こういう最先端企業に女性社長がどんどん進出してこそ、本来の女性活躍だと思いますが、やはり、スキルを持った女性が起業するケースが多いのでしょうか。
調査担当者 情報通信業では、性別に関わらず業界で経験を積んだ方が独立・起業しています。設備投資を抑えた起業が可能なので、小規模な事業形態であれば自宅を事務所・職場とすることもできます。
若い方や家事などとの両立を図る女性にとっても、非常に進出しやすい業種と考えられます。
――今後、女性社長がますます増えていくためには、何が一番大切だと思いますか。
調査担当者 経営者に限らず就業する女性に対して、自立した働き方への理解度が低いことや、家事や育児、介護などと仕事の両立による負担などが、依然として女性の社会進出を阻んでいると考えます。
性別・年代を問わず、広く社会全体で男女共同参画に関する認識を高めていくことが必要と感じます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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