警察官にあこがれ「一般職員でも容疑者を追いつめられる」…大阪府警初、女性の足痕跡副鑑定官に
読売新聞 / 2024年11月1日 13時49分
大阪府警は、犯人が事件現場に残した足跡を調べる「
「鑑定作業に入ります」
10月上旬、府警本部の一室で、上野さんが足跡鑑定に臨んだ。靴底の模様が似た2足の靴から、シートに転写した足跡と一致するものを探し出す。シートの裏からライトを当てて足跡を浮かび上がらせ、拡大レンズなどで模様や大きさの違いを注意深く観察し、ものの2分で正解を導き出した。
鑑識課足跡係は、現場に残された足跡から靴のメーカーや種類を割り出し、容疑者特定につなげる重要な役割を担う。実際の現場では、複数の足跡が重なっていたり、部分的にしか採取できなかったりするケースがほとんどだが、「感覚と経験の積み重ねで判別できるようになる」という。
岸和田市出身。幼い頃から悪い人を逮捕し、困っている人を助ける警察官の仕事に憧れていた。ただ、身長は1メートル50と低く、体力面にも自信がなかった。警察官をサポートする一般職員を志し、2015年に採用されたが、事件に関わりたいとの思いは持ち続けた。
転機となったのは、東署の会計課に勤務していた当時の上司の一言だった。足跡係での勤務経験がある人で、「鑑識の仕事は刑事事件に大きく関われる。一般職員でもなれるし、容疑者を追い詰めることができるんだ」と聞かされ、異動を希望するようになった。
念願がかない、19年に鑑識課足跡係に配属。当初は、靴底の模様とほこりを見分けることも難しかったが、持ち前の根気強さで、年間数千件の足跡と向き合い、技能を上達させた。
特に印象に残るのは、22年に起きた女子大生が男に額を蹴り上げられた事件。鑑定に約1か月かかったが、女性の額から検出された靴ひもの痕が男のものと一致。裁判で、犯罪を立証する有力な証拠として採用され、「被害者の心の痛みを少しでも取り除けたかな」と振り返る。
約5年間の実務経験を積み、先月10日、副鑑定官の指定を受けた。矢野登志夫・鑑識課長は「(鑑識は)全ての刑事事件の根底を支える仕事。女性らしいきめ細かさで、日々真相解明に取り組んでいる」と評価する。
今後は、卓越した専門的な技能や知識を持ち、全国の警察官に助言や指導を行う「警察庁広域技能指導官」を目指すという上野さんは「足跡係では、女性の後輩も出てきている。これからも活躍できるようにしたい」と意気込む。
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