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警察官にあこがれ「一般職員でも容疑者を追いつめられる」…大阪府警初、女性の足痕跡副鑑定官に

読売新聞 / 2024年11月1日 13時49分

 大阪府警は、犯人が事件現場に残した足跡を調べる「足痕跡そっこんせき副鑑定官」に、鑑識課足跡係の一般職員、上野梓さん(32)を指定した。裁判所に証拠として提出する鑑定書を鑑定官と連名で作成するスペシャリストで、女性の指定は府警では初めて。上野さんは「犯人が手袋をすると指紋は残らないが、足跡はどうしても残る。技能を磨き、少しでも多くの事件解決につなげたい」と力を込める。(北島美穂)

 「鑑定作業に入ります」

 10月上旬、府警本部の一室で、上野さんが足跡鑑定に臨んだ。靴底の模様が似た2足の靴から、シートに転写した足跡と一致するものを探し出す。シートの裏からライトを当てて足跡を浮かび上がらせ、拡大レンズなどで模様や大きさの違いを注意深く観察し、ものの2分で正解を導き出した。

 鑑識課足跡係は、現場に残された足跡から靴のメーカーや種類を割り出し、容疑者特定につなげる重要な役割を担う。実際の現場では、複数の足跡が重なっていたり、部分的にしか採取できなかったりするケースがほとんどだが、「感覚と経験の積み重ねで判別できるようになる」という。

 岸和田市出身。幼い頃から悪い人を逮捕し、困っている人を助ける警察官の仕事に憧れていた。ただ、身長は1メートル50と低く、体力面にも自信がなかった。警察官をサポートする一般職員を志し、2015年に採用されたが、事件に関わりたいとの思いは持ち続けた。

 転機となったのは、東署の会計課に勤務していた当時の上司の一言だった。足跡係での勤務経験がある人で、「鑑識の仕事は刑事事件に大きく関われる。一般職員でもなれるし、容疑者を追い詰めることができるんだ」と聞かされ、異動を希望するようになった。

 念願がかない、19年に鑑識課足跡係に配属。当初は、靴底の模様とほこりを見分けることも難しかったが、持ち前の根気強さで、年間数千件の足跡と向き合い、技能を上達させた。

 特に印象に残るのは、22年に起きた女子大生が男に額を蹴り上げられた事件。鑑定に約1か月かかったが、女性の額から検出された靴ひもの痕が男のものと一致。裁判で、犯罪を立証する有力な証拠として採用され、「被害者の心の痛みを少しでも取り除けたかな」と振り返る。

 約5年間の実務経験を積み、先月10日、副鑑定官の指定を受けた。矢野登志夫・鑑識課長は「(鑑識は)全ての刑事事件の根底を支える仕事。女性らしいきめ細かさで、日々真相解明に取り組んでいる」と評価する。

 今後は、卓越した専門的な技能や知識を持ち、全国の警察官に助言や指導を行う「警察庁広域技能指導官」を目指すという上野さんは「足跡係では、女性の後輩も出てきている。これからも活躍できるようにしたい」と意気込む。

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