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保護司制度 安全に活動できる態勢を作れ

読売新聞 / 2024年11月1日 5時0分

 罪を犯した人の立ち直りを支える保護司は、再犯を防ぎ、社会の安定に寄与する大事な役割を担っている。国は、保護司が安心して活動できる環境を早急に整えねばならない。

 全国に4万6000人いる保護司は、保護観察付き有罪判決を受けた人や刑務所から仮出所した人らと定期的に面接し、生活や仕事の相談に乗っている。家庭の温かみを感じてもらうため、面接は保護司の家で行うことが多い。

 ところが、今年5月、保護司の男性が大津市の自宅で殺害され、担当していた保護観察中の男が逮捕される事件が起きた。

 事件後、法務省が全国の保護司を調査したところ、活動に不安を感じる人が2割を占め、70人は退任の意向を示したという。

 制度の存続に関わりかねない、深刻な状況である。また、保護司の平均年齢は65歳に達し、担い手不足も問題になっている。保護司の安全が確保されなければ、人員不足の解消も見込めない。仕組みの見直しを急ぐ必要がある。

 法務省の検討会がまとめた最終報告書は、保護司の安全対策として、面会場所を自宅以外に確保し、面接には複数の保護司で臨むことなどを提言した。

 保護司の活動拠点である各地の更生保護サポートセンターは面接場所の候補となろう。ただ、保護司や対象者の自宅から遠く、夜間や休日に使えないところもある。センターの数を増やし、開所時間の見直しを進める必要がある。

 東京都大田区では、区役所や区の施設も部屋が空いていれば面接に利用できるようになっている。各地の公民館を使うことも検討に値しよう。地域の実情に合わせ、可能な方法を選択してほしい。

 心理学や教育学などの専門知識を身につけ、対象者の更生を支援する「保護観察官」という国の制度があるが、現在1000人しかいない。保護司との連携不足が指摘されており、法務省は、保護観察官の増員を計画している。

 そうなれば、保護観察官がオンラインなどで面接に加わったり、保護司の相談に乗ったりしやすくなるはずだ。保護司を孤立させないことが重要である。

 薬物やサイバーなど犯罪が多様化し、保護司にも専門性が求められる時代になってきた。犯罪者に接してきた警察OBらの登用を増やす工夫なども必要だろう。

 保護司は社会奉仕の精神に支えられている。無給のボランティアで制度を持続できるのかといった点も引き続き検討が必要だ。

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