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アバター接客、コンビニや携帯電話ショップに広がり…成約に好影響もたらす業種も

読売新聞 / 2024年11月2日 13時10分

 コンビニや保険業界などで、自宅などからアバター(分身)を遠隔操作して接客する試みが広がりつつある。国内で深刻化する人手不足を補うとともに、多様な働き方を実現して病気の人にも就労の道を開くなど、新たな接客スタイルとして注目されている。(山口翔平)

寝たきりでも

 「クーポンをご使用ですか」「前の画面に戻っていただけますか」

 9月19日午前、東京都豊島区の「ローソン北大塚一丁目店」では、セルフレジ横に設置されたモニターに表示された女性のアバター「あおいさん」が客に声をかけていた。声の主は都内に住む女性(48)。2022年頃に全身の筋力が低下する難病を発症し、自宅で寝たきりの生活を送っている。

 以前は、病院や福祉事業所で障害者の就労支援などの仕事をしていたが、発症後は働けなくなった。そんな中、ローソンが「週1回から自宅勤務可能」との条件でアバターのオペレーターを募集していることを知り、応募した。今年5月から最大で週3日、1日あたり1~2時間、体調とも相談しながら接客に当たっている。

 女性は、客から「ありがとう」「また来るね」と言ってもらえることにやりがいを感じるといい、「仕事を通じて、自分がやれる範囲で社会貢献ができていることがうれしい」と話す。

 ローソンは22年11月、主にセルフレジの使い方が分からない客に対応するため、アバターによる接客システムを導入。現在、東京、大阪、福岡など全国6都府県の18店舗で展開し、障害者や主婦、フリーターなど計約60人がオペレーターとして働いている。25年度には1000人に増やす計画だ。

人材難

 市場調査会社「シード・プランニング」(東京)の動向調査によると、アバターやロボットなど遠隔接客サービスを提供する国内の企業は、18年の11社から23年には42社に増加。うち半数の21社で、人間や人工知能(AI)がオペレーターとなって遠隔操作するアバター方式を採用している。年々拡大中の市場規模も、24年は112億円に上り、25年には127億円になると予測する。

 コンビニのほか、携帯電話ショップやホテルなど、アバター接客が拡大する背景には、コロナ禍で非対面の接客スタイルが日常化したことに加え、国内の労働力不足が深刻化していることがある。

 厚生労働省の雇用動向調査によると、23年6月末時点で産業別で不足している労働者は「宿泊業、飲食サービス業」の33・6万人が最も多く、25・5万人の「卸売業、小売業」が続いた。

 アバター接客は思わぬ効果も生んでいる。保険比較サイトを運営する「保険市場」(大阪市)は、22年からオンライン相談の場面にアバター接客を導入した。相談員が画面に顔を出して対応するより、契約まで進む割合が1・5倍以上高かったという。

 運営会社の田坂貴典執行理事(44)は「保険は個人の事情に踏み込んだ神経質な話題が多い。アバター相手の方が話しやすいと感じる人も多いのだろう」とし、「営業は顔を見せて信頼を勝ち取るという雰囲気があったが、アバターが想像以上に支持された」と驚きを隠さない。現在は、オンライン相談の約4割をアバターで対応しているという。

人間と協働

 ただ、現状では人間との「共存」が前提だ。

 例えばコンビニの店頭では、商品について詳しい質問をされた場合などの対応は人間が担うほか、人間の従業員の存在が万引きへの抑止力につながっている面もあるとされる。画面を通じたアバターとのやり取りに不慣れだったり、抵抗感を持ったりする人も少なくないとみられる。

 三菱総合研究所の中村裕彦・先進技術センター主席担当部長は「アバターをうまく活用できれば、働き手の確保が難しい地方や過疎地でも、質の高い接客サービスを維持できる」と指摘。その上で「アバターとの協働で、人間は現場でしかできない仕事に注力できる」と話す。

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