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ヤギ専攻の女子高生2人、「ヤギ一本で生活するのは難しい」のにナゼ?…攻撃してくる凶暴な面も

読売新聞 / 2024年11月3日 22時34分

体重を計算するためヤギの体長を測る生徒たち(県立中央農業高校で)

 「アルプスの少女ハイジ」には子ヤギのユキちゃんが登場する。その愛らしい姿に「ヤギを飼いたい!」と夢見た人も多いのでは? 実は富山県立中央農業高校では昨年度、5年ぶりに「ヤギ専攻」が復活した。畜産の中でも牛と比べるとマイナー気味なヤギ。生徒たちはどんな思いで学んでいるのだろうか。(岸本健太郎)

「青空教室なんです」

山羊 やぎ 舎は、約30頭の牛が暮らす牛舎から少し離れた場所にある。「舎」と言っても、建物はビニールハウスを改装したもの。その中で6頭のヤギがメーメーと暮らしている。

 取材をした日は、生徒たちが建物の横でシートを広げ、いきなり授業が始まった。あっけにとられていると、3年の浦田七海さん(18)が言った。「牛と違って、事務所がないので青空教室なんです」

 ヤギ専攻は、浦田さんと岡本唯花さん(18)の2人だ。県東部家畜保健衛生所の職員から、ヤギの習性や伝染病予防のため守るべき飼養衛生管理基準を学ぶ。ヤギは脱走が得意で、ドアは二重ロックにしないと自分で外して逃げる……ということも学びの範囲内だ。

 この日は、体重計に乗せなくても体長や胸囲からヤギの体重を割り出す実習があった。測ったのは雄と雌のヤギ「青」と「赤」。かつては「シラス」と「イクラ」と名付けられたが、「誰も呼ばずに忘れ去られ」(浦田さん)、今は首輪の色が名前になった。

牛のつもりで入学したが

 浦田さんと岡本さんは入学当初、ヤギ専攻に進むつもりはなかったという。

 浦田さんとヤギの出会いは、中学生の時にオープンスクールで同校を訪れたこと。牛舎の横のスペースに「ちょこっと」いたヤギが気になった。育てた牛の肉質を競う「和牛甲子園」の常連となった同校が力を入れる牛に目もくれず、草をみ続けるヤギたち。動物全般が好きだった浦田さんは「スポットライトを当てたい」と感じた。

 一方、岡本さんも「牛のつもりでこの学校に入った」が、先生の勧めもあってヤギを選んだ。「目と触り心地のいい耳が好き」と話しながら、ヤギの頭をなでていた。時には、攻撃してくる凶暴な点もあるが、知らない人が現れると近くに寄ってきて頼ろうとするところがなんともカワイイというのだ。

 2人は牛の実習にも参加するが、体の軽いヤギは爪切りなどやれることが多い。「実際にふれあう中で、ヤギとの信頼関係を深められる」ところが魅力だ。

世話して忍耐力身につく

 素朴な疑問だが、県内でヤギに関する仕事はあるのだろうか。

 県東部家畜保健衛生所の宮沢馨副主幹は「ペット用にミルクの需要があり、6次産業としてチーズを加工して販売している人もいる。だが、ヤギ一本で生活するのは難しい」と苦笑いする。それでも「ヤギを学ぶ中で、畜産の概要はもちろん、先読みしながら世話をすることや根気が身につく」と強調する。

 卒業後、浦田さんは経理の仕事に就き、岡本さんは自衛隊に入隊する予定だ。畜産は経営のために様々な書類が必要で、浦田さんは「学んだ知識が経理に生かせそう」と話す。ヤギは人間と違って思い通りに動いてくれず、岡本さんは「世話を通して忍耐力が身についた」と笑う。

 きっとハイジも気まぐれなユキちゃんに学び、大人へと成長していったのだろう。

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