ベンチャー企業が「ミッション」への共感を重視するワケ 同じバスに乗せる人を「厳しく選別」
J-CASTニュース / 2024年11月2日 13時0分
ベンチャー企業はなぜパーパス、ミッション、ビジョンを重視するか
あなたは自分が勤める会社の「ミッション」や「ビジョン」「パーパス」を正確にそらんじることができるだろうか。あれは絵に描いた餅だから自分の仕事には関係ない――などと軽視していると、デキる新入社員から冷ややかな目で見られてしまうかもしれない。
ある調査によると、就職活動において企業の「ビジョン」や「ミッション」を「意識する」と答えた人が37.0%。「どちらかというと意識する」と合わせると、3人に2人超(67.4%)にのぼったという。「意識しない(含どちらかというと)」はわずか9.7%だった。
就活生の約7割「パーパスを定める企業に好感」
この調査は、学情が2026年3月卒業の大学生・大学院生から319件の回答を得たもの。就活において企業の「パーパス」や「どのように社会に貢献しようとしているか」を意識するか、という問いには、「意識する」「どちらかというと意識する」が合わせて55.8%となった。
また、「パーパス」を制定する企業は「好感が持てる」と答えた人は38.6%。「どちらかといえば好感が持てる」を合わせると69.0%にものぼっている。
就職活動において「パーパス」を知ると志望度が上がるかと尋ねたところ、「志望度が上がる」「どちらかといえば上がる」を合わせると62.3%に。「志望度は上がらない(含どちらかというと)」は7.8%にとどまった。
企業の「ミッション」とは「企業の使命。何を成し遂げるか」を、「ビジョン」は「企業の成功イメージ。どのような姿を目指すか」を指す。最近注目の「パーパス」は、文字通り「企業の存在理由。社会的意義」を指す言葉だ。
社会人経験の乏しい若者は理想主義的で、歳を重ね経験を増やすごとに現実的になってきれいごとを軽視するようになるのは、いつの時代も同じだ。そんな傾向が調査結果にも反映しているのかもしれない。
とはいえ「パーパス」や「ミッション」「ビジョン」は、大手企業では抽象的で当たり障りのないものを掲げるところが多いものの、中には真剣に考え取り組む企業もあり、今回の調査結果と親和性がありそうだ。
ベンチャー企業の採用支援を行う転職エージェントのAさんによると、特に社会的にインパクトのある事業で大きく成長することを目指すベンチャー企業では「決して絵に描いた餅に終わらせるつもりはない」と考えるところが多いという。
「ベンチャー企業の経営者がよく読んでいるジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(日経BP刊)には、誰をバスに乗せるか、という表現で人材採用の重要性が語られています。パーパスやミッション、ビジョンは、まさにバスに乗せる人を選別するための基準になっているのです」
スキルより「ミッションへの共感」を優先する企業も
Aさんによると、非上場のスタートアップから東証グロース上場企業まで、ミッションやビジョンを非常に重視する会社は少なくないという。
「一番の理由は、メンバーの求心力を高めるためです。ベンチャーは急成長に向かって邁進するわけですが、『この会社は何のために作られたのか』『この会社は何を目指すのか』が明確になっていないと、何を頑張ればいいのか分からなくなります」
「また、よく言われるのが『ミッションやビジョンに共感していれば、多少辛いことがあっても耐えられる』ということ。ビジョン実現のため、という思いが強くあれば、やり切る粘り強さが出てくる、という考え方です」
もう一つの理由は「誰をバスに乗せるか」とともに「誰をバスから降ろすか」という基準になるから、というものだ。
「バスが西に向かおうとしているのに『いや東の方がいい』とか『そんなに早く行かなくてもいい』などと口を挟む人が乗客に混じっていると、目指すところに行けなくなります。なので、採用時には『ミッションやビジョンの意味を正しく理解しているか、強く共感しているか』という基準で人を選ぶ必要があるのです」
ミッションやビジョンについて「あまりピンとこない」「重要なのは仕事であって、理念みたいなものは興味ない」という反応を示す人は、仮に専門スキルが高かったり、過去に大きな業績を上げていたりしていても「不採用にするという方針を徹底する会社は多いです」。
また、いったん採用しても、会社の方針や価値観に合わない行動をやめない人に対して「バスから降りてもらう」理由としてもミッションやビジョンが使われるという。バスから降りてください、と言える理由をあらかじめ揃えておくということだ。
しかし、そのような「排除の論理」では多様な人材を採用できないのではないか。この疑問にAさんは「ベンチャーではビジョンの多様性は必要ない」という。
「ベンチャーにとって多様性は手段であって、目的ではありません。むしろミッションにさえ共感していれば、いろんなバックグラウンドを持つ人が採用されるわけですから、結果的に多様な人材が集まり、力を合わせることができるのではないでしょうか」
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