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半世紀にわたって愛されてきた秋田のうどん・そば自動販売機が絵本に…「ぽんこつじはんき」

読売新聞 / 2024年11月4日 11時55分

 秋田市の秋田港近くで半世紀にわたって愛される「うどん・そば自販機」を題材にした絵本「ぼくは ぽんこつ じはんき」(あさ出版)が発売される。作家の由美村嬉々きき(本名・木村美幸)さん(65)が秋田で取材を重ねた。(夏目拓真)

 〈ぼくは、うどん・そばじはんき。海の見えるこの土地にずっと住んでいる。ぼくのことを、みんなは『ぽんこつじはんき』とよんでいる――〉

 自動販売機は1973年、秋田市土崎港西の「佐原商店」に設置された。24時間、うどんやそばを購入することができ、地元住民やツーリング客らに愛されてきた。現在は近くの「道の駅あきた港」で稼働しているが、近年は老朽化や交換部品の不足もあり、故障することも多い。

 絵本は、商店の閉店に伴って自販機が撤去される予定だった2016年頃を舞台とする。自販機の視点からうどんやそばを買い求めにやってくる人々の人間模様や撤去を惜しむ様子を描き、多くの人に愛されながら、自販機が存続してきた様子を取り上げた。

 絵本を手がけた由美村さんは、大手出版社の取締役として多くの絵本に関わってきた。編集者時代から、「いつかは自分で本を書きたい」と、集めたネタを大学ノートに書きため、22年から絵本や評論、エッセーなど幅広いジャンルの本を出版している。

 由美村さんと自販機との出会いは2015年。テレビのドキュメンタリー番組で取り上げられていたのを目にし、興味を抱いた。「なぜ、こんなにも多くの人に愛されているのか」と、真冬の秋田に足を運んだ。

 厳しい寒さのなか、うどんを買おうと長蛇の列に並んでいた時、目の前で自販機が故障した。「自販機の中で人が作業しているのではと思うほど愛くるしい雰囲気が、多くの人を引きつける」と感じたという。

 その後も自販機が愛される理由を探ろうと秋田に何度も足を運び、うどんやそばを買い求める人々を観察した。「寒さの中で食べた温かいうどんに涙しそうなこともあった」と、自らも魅了されていった。

 作中では取材を基に、自販機が家族連れやカップル、トラック運転手など、多くの人の憩いの場となっている様子を描いた。タイトルの「ぽんこつ」という言葉は、故障が多いことを理解した上で、多くの人に愛されていることを表現したという。

 絵本には、50年以上にわたって自販機を管理する佐原澄夫さん(73)も、トレードマークの青いジャンパー姿で登場する。

 佐原さんも「ぽんこつ」という言葉に好意的といい、「正直、いつまで動くか分からない。絵本として自販機が残り続けてくれることがうれしい。自販機を愛してくれる多くの人に感謝したい」と笑顔を見せた。

 由美村さんは「このレトロな自販機は、都会にはない魅力的な場所。『秋田にこんな場所があるんだよ』ということを全国の人に知ってほしい」と話した。

 「ぼくは ぽんこつ じはんき」(税込み1540円)は、全国の書店やネットで購入できる。

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