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脱炭素ビジネス、東南アジアで商機…日本企業が技術前面に支援

読売新聞 / 2024年11月4日 7時3分

東南アジアの都市では開発が進み、温室効果ガスの排出増が懸念されている(10月、バンコクで)

 日本企業が東南アジアで脱炭素ビジネスに力を入れている。東南アジア各国は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減目標を掲げるが、関連技術の蓄積は乏しい。日本政府も東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国が参加する国際的枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を主導し、日本企業を後押しする。(バンコク 井戸田崇志、写真も)

潜在的需要

 温室効果ガス排出量の算定システムを手がける新興企業「ゼロボード」(東京)は2023年3月、タイの首都バンコクに現地法人を設立して東南アジアに本格進出し、現在、約300社にシステムを納入している。電気使用量などを基に企業全体や特定の製品の生産に伴う排出量を算定する。

 現地法人の鈴木慎太郎社長は「脱炭素化への対応を取引先の欧米企業から求められたり、株式市場に開示したりする必要が生じても、自社の排出量さえ把握できていない企業が多い」と、潜在的な需要は大きいと分析している。

 IHIは、26年にマレーシアで燃焼時にCO2を出さないアンモニアで発電するガスタービンの商用運転を始める。インドネシアでも、既存の火力発電所の燃料を石炭からアンモニアに転換する技術開発を行う。

 住友商事はベトナムで、再生可能エネルギー由来の電力の送電網を構築する実証事業に取り組む。出光興産は、マレーシアの国営石油会社と次世代航空燃料「SAF」の供給網を構築するために共同で検討に入っている。

目標

 国際エネルギー機関(IEA)によると、22年のアジアのCO2排出量は世界全体の半分を占めた。特にASEANでは大量のCO2を排出する石炭火力発電所が総発電量の4割以上を占めている。脱炭素化は急務だが、外国の支援への期待が目立つ。

 タイは30年に排出すると想定されている温室効果ガスを、脱炭素対策によって30%削減することを目指すが、海外からの技術投資が増えれば40%に拡大できるとしている。インドネシアも30年に32%削減を掲げるが、先進国などの支援が得られれば43%に引き上げる。

 こうした状況は、日本企業の商機となっている。シンガポールの調査研究機関「ISEASユソフ・イシャク研究所」が9月に発表したASEAN加盟国の政府機関など約2900人を対象にした意識調査では、気候変動対策の技術革新で世界を先導する国として日本を挙げた人は最多の29%で、米国(18%)や中国(14%)を上回った。

成果

 AZECはアジアの脱炭素化を図る枠組みで、日豪と東南アジアの計11か国が参加している。すでに日本企業や各国の政府、企業などとの協業が164件進められるなど、日本主導の成果が表れ始めた。

 8月に日本政府とCO2を地中に貯留する「CCS」の推進で協力する覚書を結んだシンガポールのタン・シーレン第2貿易産業相は「CCSの技術革新のリーダーである日本から学ぶことは多い」と話す。

 東南アジアでは、自動車や不動産分野などで投資を拡大する中国の影響力が強まっている。日本政府は「巨大な脱炭素市場を生み出し、投資を呼び込むことが日本企業のビジネスの後押しになる」(武藤経済産業相)と、脱炭素分野で日本の存在感を高めたい考えだ。

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