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京野菜「九条ねぎ」、同業者による窃盗相次ぐ…納入ノルマのプレッシャーや夏場の気温上昇も背景か

読売新聞 / 2024年11月4日 10時12分

「盗難警戒中」と書かれたパネルの掲示を依頼される農家(左、八幡市で)

 京都府久御山町や八幡市で京野菜の「九条ねぎ」が相次いで盗まれた事件は、「同業者」の男2人が逮捕される事態に発展した。地元農家らは憤りを覚えつつ、さらなる被害を防ぐための警戒を余儀なくされている。事件の背景には、生産農家の苦悩も見え隠れする。(下林瑛典、冨浪俊一)

「経営苦しく」

 久御山町と宇治市の畑では今年6~9月、九条ねぎが盗まれる事件が8件発生し、被害は計約3・5トンに上った。このうち、8月30日~9月1日に同町の畑から約216キロ(約19万円相当)を刈り取って盗んだ疑いで、京都府警宇治署が同月12日、農業の男(28)(京都市伏見区)を窃盗容疑で逮捕し、地検が同27日に起訴した。

 捜査関係者によると、男は過去に農業関係の会社で働いた後、農家として独立し、九条ねぎを生産していた。逮捕後の調べに、他の畑からも盗んだことを認め、「取引先に週800キロを納めなければならなかったが、今年は雨が少なくねぎが育たず困っていた。事業がうまくいかず、経営が苦しかった」と供述したという。

 決められた数量を納入しなければならないプレッシャーが、動機につながった可能性がある。

緊急パトロール

 八幡市内の畑でも9月19日から20日にかけ、約150キロの九条ねぎが盗まれる事件が発生。八幡署は10月14日、京都市伏見区の男(35)を窃盗容疑で逮捕した。容疑を否認しているが、男も九条ねぎを生産していたという。

 大量のねぎが短時間で刈り取られた手際の良さなどから、収穫に慣れた農業関係者の仕業と考える関係者は被害が起きた当初からいた。約580キロの窃盗被害に遭ったという久御山町の男性は「出荷の計画が長期間狂ってしまう。同業がやっているなら農家の気持ちがわかるはずで、踏みとどまってほしかった」と嘆く。

 八幡市は10月2日、八幡署やJA京都やましろの関係者らと緊急の夜間パトロールを実施。盗難のあった畑の状況を確認し、農家に「盗難警戒中」と書かれたパネルの掲示などを依頼した。被害に遭った男性は「昨年も相当な量を盗まれた」とし、「パトロールはありがたい。盗難の抑止になれば」と期待した。

暑さも背景か

 近年の夏場の気温上昇に伴う収穫量の減少が、事件につながった可能性を指摘する意見も出ている。

 久御山町などを所管する「JA京都やましろ」によると、十数年前から夏場の九条ねぎの収穫量は減少。同JAが運営する加工場「ネギカットセンター」では、5、6月だと週に7トン以上の入荷があるが、8月は3・5トンほどに落ち込むという。

 久御山町は今年度の9月補正予算に、防犯カメラ設置費用の半額を助成する補助金100万円を計上した。同町の担当者は「監視の目を増やすことで、盗難の抑止に加え、事件が起きた場合の早期解決にもつながる」と話している。

ブランド農作物、全国で被害

 ブランド農作物の窃盗被害は全国的に相次いでおり、野菜のほか、果物や米なども狙われている。

 山梨県では収穫直前のシャインマスカットが盗まれる事件が近年相次ぎ、一晩で1900房(140万円相当)盗まれたケースもあるという。

 農林水産省は、▽農地にネットや柵を設置し、侵入しにくい環境をつくる▽防犯カメラやセンサー、「防犯カメラ作動中」などの看板を設置する――などの対策を紹介している。

 同県南アルプス市のJAは、夜間に畑で人を感知した場合、情報をメール配信するセンサー60台を農家に貸し出す対策を講じている。

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