皇室典範に勧告 歴史や伝統を無視した発信だ
読売新聞 / 2024年11月5日 5時0分
皇位継承のあり方は、国家の基本にかかわる事柄である。その見直しを国連の名の下に、付属機関で活動している個人が要求してくるとは、筋違いも甚だしい。
国連の女子差別撤廃委員会が、皇位継承を「男系男子」に限っている皇室典範について、男女平等を保障する内容に改めるよう、日本政府に勧告した。
勧告は、皇位継承のあり方を「女性に対するあらゆる差別を禁じた女子差別撤廃条約の趣旨に反している」と主張している。
日本の皇室制度は長い歴史の中で培われてきた。男系男子による皇位継承は、今上天皇を含めて126代にわたる。また、一時的に女性が天皇になった例もある。
王室や皇室のあり方は、それぞれの国の伝統や国柄が反映されており、尊重されねばならない。
委員会は、23か国の専門家で構成されている。今回の勧告は、ネパールの委員がまとめたものだ。勧告に法的拘束力はないが、この発信は、あたかも皇室典範に女性差別があるかのような誤った印象を広げる恐れがある。
政府が委員会に抗議し、皇室典範に関する記述の削除を求めたのは当然だ。国際社会に対し、勧告が日本の皇室制度の特徴を何ら理解せず、誤解に基づくものだと説明していくことも欠かせない。
そもそも憲法は、天皇の地位について「国民の総意に基づく」と定めている。皇室をどう安定的に維持していくのかは、国民が考えて決めるべき問題である。
勧告はまた、選択的夫婦別姓の導入も注文した。
法制審議会が1996年に選択的夫婦別姓の導入を答申して以来、国内ではその是非について議論が続いている。先の自民党総裁選でも論戦のテーマとなった。
夫婦が別々の姓を名乗ることになれば、社会や家族のあり方に大きな影響を及ぼす。子供は、父親か母親と別の姓になるという問題も無視できない。導入の是非については慎重に検討すべきだ。
このほか委員会は、日韓両国が2015年に「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した慰安婦合意について、賠償請求への対応を求めた。かつては合意自体を「解決していない」と否定していた。
合意に基づき、日本政府は、韓国が設立した元慰安婦支援のための財団に10億円を拠出した。その財団から、多くの元慰安婦が支援金を受け取っている。
2国間の合意にまで口を出すとは、あきれてものが言えない。
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