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能登地震で妻子4人亡くした父、家族写真を胸に金沢マラソン完走…「『かっこよかった』と言ってくれたら」

読売新聞 / 2024年11月8日 16時50分

家族の写真を胸に走る大間さん(10月27日、金沢市で)

 能登半島地震で妻子4人を失った警察官の大間圭介さん(42)が、10月27日に金沢市内で開催された「金沢マラソン2024」に出場した。胸に4人の写真を貼り付け、「家族5人」で臨んだ舞台。完走し、前を向いて頑張る父の姿を天国の家族に届けた。(石川泰平)

 大間さんは元日、石川県珠洲市仁江町にある妻はる香さん(当時38歳)の実家で被災。裏山の土砂崩れで家が押し流され、はる香さんと長女優香さん(同11歳)、長男泰介君(同9歳)、次男湊介そうすけちゃん(同3歳)に加え、義父母ら計9人が亡くなった。

 それから、喪失感と絶望にさいなまれる日々が続いた。そんな時、金沢マラソンの開催の知らせが目に入り、ある思い出が胸をよぎった。昨秋、優香さんと泰介君が学校のマラソン大会で自己最高順位を更新し、家族のモットー「目標を持って、がんばればできる」を実現したことだった。

 次はお父さんが頑張らなだめやな――。必死に頑張ったあの時の子どもたちに続こうと、6年ぶりのフルマラソン挑戦を決めた。エントリーが済んだ4月から、平日に約10キロ、休日に約20キロを走り込んだ。はる香さんのかつての職場まで走っては「行ってきたよ」と写真の中のはる香さんに伝えた。階段ダッシュをする公園は、かつて家族みんなで戯れた場所。海岸線を家族全員で仲良く走った記憶も鮮明によみがえった。練習をしながら、家族との思い出をなぞった。

 迎えたマラソン当日。実際のレースは練習よりも過酷だった。胸に着けた写真に「背中を押してくれ」と語りかけ、力に変えた。途中には優香さんの友達が、「いつもたくさん応援ありがとう 今日はマラソンがんばってね」と書いた手作りのメダルをくれた。「少しでもかっこいい父の姿を見せたい」。沿道の声援にも救われ、ゴールまで足を止めずに走りきれた。

 記録は3時間58分8秒だった。「(天国の家族が)『お父さんかっこよかった』と言ってくれたらうれしい」と、表情は晴れやかだった。

 地震から10か月が経過したが、家族を失った苦しさは変わらない。孤独感は余計に増している。それでも、「自分だけの人生じゃない。いつまでも下ばかり向いてもいられないな」という思いも、芽生えてきている。マラソンを終え、自分なりに次の目標を見つけようとしている。

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