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寒い季節に欠かせない「焼き芋」、ほっこり幸せな甘さ

読売新聞 / 2024年11月6日 17時30分

 寒さが増し、焼き芋がおいしい季節になりました。読売新聞朝刊の投書欄「気流」には焼き芋に関する投書が多く寄せられてきました。記者の心に刺さった投書を紹介する「ササる投書」、今回のテーマは「焼き芋」です。(※投稿者の年齢や職業などは掲載当時。紙面では実名で掲載)

たき火で暖を取りながら

 小学1、2年生の頃だったか。稲刈りを終えた田んぼで、近所のおじさんたちが集まり、たき火に当たりながら談笑していた。

 その近くで私たち子どもは遊んでいたが、転んで大泣きした子がいた。するとおじさんの一人が「そばに来て、芋でも食えよ」と抱き起こし、泣いている子の手に焼き芋を握らせた。

 「わしにもおくれよ!」「うちにも!」。一斉に子どもたちの手が伸びる。たき火で暖を取りながら、みんなで熱々の焼き芋をほおばった。貧しかった子ども時代の幸せな思い出だ。(74歳・主婦=千葉県、2021年1月24日掲載)

移動販売車からの声 幸福な記憶

 焼き芋の移動販売車が今年も来る頃です。年季の入ったスピーカーから出る音は、雑音交じりですが、甘くねっとりした焼き芋のように温かみを感じます。初めて日本の焼き芋を食べたのは、2年前に中国から来たばかりの時でした。街中をゆっくり回る軽トラックの後ろを、わくわくしながら追いかけました。

 日本からの留学生だった夫と出会った、中国の大学の構外にも焼き芋屋さんがあって、宣伝の呼び声が耳に残っています。実家の街でも秋になると、焼き芋を売る声が聞こえました。

 焼き芋を食べると、いつでもどこでも思わずほほえんで幸せな気分になります。(29歳・翻訳業=埼玉県、2021年10月24日掲載)

慌てて購入、大切な50円玉が…

 小学生の頃、今より大きく穴が開いている、当時の50円玉を集めていました。小遣いに交ぜてもらうなどして集め、発行年順に並べたコイン帳は宝物でした。

 なのにある日、久しぶりの焼き芋屋さんに慌てたのでしょう。親が出すお金を待てず、50円玉を2枚握りしめて兄弟の分を買いました。家で作るのとは比べものにならない甘さでした。

 満足した後に、大切な硬貨を使ってしまったという大失敗に気づきました。その後も集め続けても、なぜかその年の50円玉は空白のまま。焼き芋屋さんの声が聞こえると、甘さと茫然自失(ぼうぜんじしつ)の感がよみがえります。(62歳・無職=新潟県、2021年10月24日掲載)

担当記者から

 昔は屋台で購入していましたが、今は焼き芋を売っているスーパーもあります。食べたい時に待たずに買えるのはうれしいですが、健康診断前は……(田渕)

 「ササる投書」を随時掲載します。次回もお楽しみに!

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