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米大統領選 トランプ再登場でどう変わる

読売新聞 / 2024年11月7日 5時0分

◆亀裂の修復と秩序の再建が急務◆

 米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領が、民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、勝利した。

 自らに反対する勢力はすべて敵だとみなし、米国社会の亀裂を体現するようなトランプ氏が、再び政権を担う。米国の威信と民主主義を取り戻し、国際秩序を再建できるだろうか。

異例ずくめの戦い

 今回の大統領選は、トランプ氏の復権か、それとも「反トランプ」かをめぐる選択だった。

 トランプ氏は2020年の前回選挙で民主党のバイデン大統領に敗れたが、結果を受け入れず、支持者が米連邦議会を襲撃する事態へと発展した。この事件を含む四つの刑事事件で起訴された。

 大統領経験者が刑事訴追されながら、3度目の大統領選に臨んだことは異様である。

 さらにトランプ氏は7月には銃撃を受け、別の暗殺未遂事件にも見舞われた。しかし、事件を暴力に屈しない「強い指導者」の演出に利用し、支持を伸ばした。

 一方、民主党は、再選をめざしていたバイデン氏が7月になって撤退し、ハリス氏が候補となった。「打倒トランプ」で党を結束させたが、党予備選を経ずに選ばれた経緯もあり、資質への不安を払拭ふっしょくできなかった。

 通例なら複数回行われる大統領候補の討論会は、トランプ氏とハリス氏との間で1度しか行われず、ののしり合いが目立った。選挙を通じ、内戦にも似た深刻な亀裂があらわになったのは残念だ。

 トランプ氏を再び大統領に押し上げたのは、バイデン政権に不満を抱く有権者が、変化を求めた結果にほかならない。

 この4年間で記録的な物価高が進み、「バイデン・インフレ」と呼ばれた。不法移民が急増し、社会不安が高まった。現政権の中枢にいるハリス氏にも、有権者の厳しい批判が向けられた。

インフレへの不満募る

 民主党はもともと労働組合を支持母体とし、「庶民の党」を標榜ひょうぼうしてきた。だが近年は、人種や民族、ジェンダーといった問題でより過激な政策の実現を求める急進左派の発言力が増し、エリート化が指摘されていた。

 一方、トランプ氏は大統領を経験しながら政界の「アウトサイダー」を自認し、人々の怒りや不満をあおって支持を広げてきた。こうした訴えが白人労働者のみならず、社会に閉塞へいそく感を覚える無党派層にも浸透したのではないか。

 ロシアによるウクライナ侵略と、パレスチナ自治区ガザをめぐる紛争が同時進行し、人命が奪われ続けている。中国は米国が主導してきた自由で民主的な国際秩序に公然と挑み、自国に有利なルール作りを進めようとしている。

 トランプ氏は6日の勝利宣言で、「米国を再び偉大にする」という1期目以来のスローガンを繰り返した。同盟・友好国であっても応分の負担を求め、関税などを武器に「ディール」を試みる手法は不変とみられる。

 1期目にはロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記ら強権指導者との個人的関係を深め、首脳外交で事態打開を図ろうとしたが、いずれも成果につながらなかった。慎重な対応を求めたい。

 ウクライナ侵略について、トランプ氏は「就任前に終わらせる」と公言してきた。しかし、停戦を急ぎ、国際法を犯したプーチン氏に譲歩するようなことがあれば、法の支配や主権尊重に基づく国際秩序は根本から揺らぐ。

 トランプ氏は大統領在任中にイスラエルの首都をエルサレムと認めるなど、極端なイスラエル寄りの姿勢で知られる。バイデン政権と同様、イスラエルへの武器援助を続ける可能性が高い。

 米国の利益だけでなく、世界の平和と安定を主導してこそ偉大と言える。トランプ氏がその意味で、偉大さを取り戻すという約束を果たすことを期待したい。

試される日本の外交

 中露は軍事的な挑発を繰り返し、北朝鮮がロシアへの派兵に踏み切るなど、日本周辺の安全保障環境が悪化する中、日米同盟の重要性は一段と増している。

 バイデン政権は同盟や国際協調を重視する立場だったが、今後は、米国が在日米軍駐留経費の日本側負担の大幅増などの要求を突きつけてくる事態が予想される。

 安倍晋三元首相がトランプ氏との間で築いたような個人的関係に頼ることはできない。日本として主張すべきは主張しつつ、同盟関係の維持と強化を図らねばならない。日本の外交力が試される。

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