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なぜ人は同人誌を作るのか、”熱”狂の夏コミで何が起きていたか…「魂の自由がある」「憧れだった」

読売新聞 / 2024年11月8日 17時0分

数万人の同人誌ファンがひしめく東棟1・2・3ホール。手をかざすと熱を感じた(魚眼レンズ使用)(8月11日、東京ビッグサイトで)

 日本ほど「同人誌」が好きな国はない。それを裏付けるのが、同人誌即売会イベントの盛況ぶりだ。なぜ人は同人誌を作るのか。それが知りたくて、8月11、12日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた「コミックマーケット104(C104)」の1日を追った。(文化部 石田汗太)

初日 カメラマン「熱気でレンズが…」

この日の最高気温は35・9度。

午前9時 東京ビッグサイトに到着。取材腕章をもらう。やぐら橋前の広場では開場待ちの参加者が多数座り込んでいる。

同10時半 C104開会。人気サークルの前にはたちまち長蛇の列。ただ、コロナ前に比べると人が7割程度なのと、入場チケットが3段階時間制なので混雑は緩和されている。人気ジャンルではスマホ向けソーシャルゲームが圧倒的に強い。

同11時 屋外駐車場から入場者の隊列が整然と東棟に吸い込まれていく。暑さで倒れ、救護室に運ばれる人もいる。

同11時15分 セーラームーンに(ふん)した筋肉美の男性を撮影する。「フランス人です。住まいは埼玉県だけど」

正午 東展示棟から企業ブースが集中する西・南棟に移動。西棟屋上コスプレエリアでは猛暑の中、人気コスプレイヤーの前に撮影者の列ができていた。

午後0時半 カメラマンと合流するため東棟に戻る。20分以上も炎天下を歩くハメに。

同1時 東棟1・2・3ホールのキャットウォーク(高さ約30メートル)から会場撮影。地上からオタクの熱気が立ち上ってくるようだった。カメラマンは「湯気でレンズが曇るかも」と本気で心配していた。

同2時 知人(37)のサークルで売り子の手伝い。少し関わった同人誌なので、買ってくれる人がいるとドキドキする。

同3時 近くの机で、京都から初参加したA子さん(36)が地元商店街で描いた黒板イラストの本を売っていた。感想を聞いてみた。「コミケにサークル参加するのは憧れでした。黒板イラストがたまってきたので、本にしたら喜んでもらえるかなと思ったんです。すごく楽しかった! 遠方のファンもたくさん来てくれたし、この時間が終わってほしくないくらい」

同4時 第1日閉会。拍手で締める。180冊売り上げた知人は「新記録」と上機嫌だった。

2日目 64か国・地域から来場者

この日の最高気温は35・5度。

午前9時半 漫画編集者の鳥嶋和彦さん(71)が来場していた。鳥嶋さんは「週刊少年ジャンプ」編集者時代の1983年、当時のコミケをルポして同誌で特集したことがある。

――今のコミケをどう見ますか?

 「昔の方が会場が小さかったから熱気はあったけれど、最近のコミケは運営がきれい。ボランティアスタッフの能力はすごい。最近、独デュッセルドルフのDoKomi(ドコミ)というイベントに行ったが、世界中に増えたポップカルチャーイベントは全部コミケがお手本。ある種の文化の土壌を作ってきたのはコミケだってことを、国や企業はもっと考えてほしいね」

同10時半 2日目開会。本日は知人サークルの売り子に徹する。座っているだけで暑い。

正午 昨日に比べ売れ行きが鈍い。「立ち読みしていってください」と懸命に声をかけるがあまり効果がない。本日は「男性向け」サークルが多い。人がそこに吸い取られているのか。

午後2時半 牧村えりんさん(57)の美少女イラスト本を買う。82年頃からサークル参加している古参だ。「年2回、ここに来ると懐かしい人に会えますからね」。

同3時 準備会による「今日のご予算は?」というアンケートが東館に貼ってあった。参加者が自由にシールを貼る仕組み。2万~3万円にシールが集中していたが、10万円以上と答えた人もかなり多くて驚く。

同4時 全日程終了。粘ったら最後の10分間で5冊売れた。椅子や机を片付けて撤収。準備会によると、2日間の参加者数は計26万人。64か国・地域からの参加があった。参加サークル数は2万4000。

同6時 知人と打ち上げ兼反省会。計230冊が売れた。そこそこもうかったかと思いきや、「売値の9割は印刷所への支払い」と知人。他に参加費もかかるので、完売しても利益はほとんど出ない。なのに、なぜ同人誌を出し続けるのか?

 「魂の自由があるから、かなあ」。その答えはピンとこなかったが、この2日間で、忘れていた何かを呼び覚まされたような気もした。しばらく遠ざかっていた同人誌作りに、もう一度チャレンジしてみようか。

コミックマーケットとは…

 1975年に始まり、来年50周年を迎える世界最大級の同人誌即売会。コミケ、コミケットとも呼ばれる。約3000人のボランティアからなる「コミックマーケット準備会」が運営する。基本的に8月と12月の年2回開催。96年から東京ビッグサイトを会場としている。今回が104回目。

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