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「米国第一」トランプ氏大勝、保護貿易に警戒感…追加関税なら日本製品を直撃

読売新聞 / 2024年11月8日 7時44分

 「米国第一」を掲げる共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利した。あらゆる国を対象とした関税引き上げや、国際的な貿易枠組みからの撤退、電気自動車(EV)優遇策の見直しなどを掲げており、日本経済も影響を受けることは必至だ。(久米浩之、田中俊資、坂本幸信)

 「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ氏は、保護主義的な通商政策を再び打ち出す見通しだ。選挙戦では、第1次政権で激しく対立した中国からの輸入品には60%超の関税を課し、日本を含む全ての国からの輸入品には10~20%の関税をかけると主張してきた。

 日本の2023年の国別輸出額は米国が20兆2602億円と、4年ぶりに中国を上回り、最大の輸出先となった。自動車や半導体製造装置、電子部品など日本の主要製品が多く、全体の約2割を占める。トランプ氏が公約通りに追加関税をかければ、日本製品の米国市場での販売価格は高くなり、価格競争力を失う。

 バークレイズ証券の推計では、トランプ氏の関税政策が実現すれば、中国の実質国内総生産(GDP)は2・0%減、日本も0・3%減となる見通しだ。同証券の馬場直彦氏は「関税政策の不確実性が高まり、日本企業の設備投資に影響が出かねない」と指摘する。中国が報復関税で反撃し、貿易戦争が繰り返される恐れもある。

 トランプ氏は他国との通商協定も白紙に戻す構えだ。前回、大統領に就任した直後には、米国が旗振り役だった環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。その後、バイデン大統領はTPPの代わりに、対中国を念頭に置いた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を打ち出して軌道に乗せた。しかし、トランプ氏はIPEFを「TPP2」と批判し、離脱する意向を示す。

 経済産業省幹部は「国際的な経済連携では、トランプ氏への対応という難題と向き合わざるを得ない」と話す。

USスチール買収 日鉄「年末までに」

 日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収する計画は、先行きの不透明感が高まった。トランプ氏は大統領選のさなかにも、「絶対に阻止する。国内に雇用を取り戻す」などと、買収に反対する姿勢を示し続けてきたからだ。

 だが、交渉を担当する日鉄の森高弘副会長は7日の決算記者会見で「間違いなく、年末までにクロージングできる」と買収実現に自信を見せた。月内に渡米し、計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)と議論する意向も示した。

 買収計画は、外国企業の投資を安全保障上の観点から審査する米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)など、米当局の審査を残すのみの状況だ。日鉄は9月、CFIUSの承認を得て計画を再申請し、審査期限は年末まで延長されている。

 日鉄はトランプ前政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏をアドバイザーに起用するなど、トランプ氏の勝利を想定した準備も進めてきた。とはいえ、「トランプ氏に計画を承認させるには何らかのメリットを示す必要がある」(関係者)との指摘もある。森氏は「選挙が終わり、ようやく冷静な議論ができる」と述べるにとどめた。

 日鉄は7日、2025年3月期の業績予想を下方修正し、業績悪化も懸念される。森氏は「日鉄が成長するには、海外の成長市場を取り込むしかない。高級鋼の需要増が期待できる米国市場は、最後に残ったピースだ」と強調した。

車大手 生産拠点見直しも

 米国を主力市場としてきた日本の自動車大手は、トランプ氏の政策転換を警戒する。

 製造業の国内回帰を目指すトランプ氏は大統領選で、隣国メキシコで製造される全ての自動車に200%の関税を課すと表明した。現在は、米国とメキシコが結ぶ貿易協定により、一定の条件を満たせば関税はゼロ。日本勢の多くがメキシコに生産拠点を設け、米国へと輸出している。

 メキシコで約20万台を生産し、約8割を米国に輸出するホンダの青山真二副社長は6日、「恒久的な関税なら、米国内や、関税対象にならない国での生産を考えざるを得ない」と述べ、生産拠点を移転する可能性を示した。

 日産自動車は2023年度、米国で約90万台を販売したが、うち24%はメキシコ生産だ。内田誠社長は7日の記者会見で、「中長期的な方向は変わらないが、よく注視したい」と述べるにとどめた。

 トランプ氏はバイデン政権が導入した電気自動車(EV)優遇策を見直す方針も示す。ハイブリッド車などを得意とする日本勢には追い風になる可能性もあるが、長期的な普及を見据え、北米でEV生産拠点の整備を進め始めた日本勢もいる。中国市場で苦戦が続くなか、米国市場の先行きも不透明感が増し、国内大手は難しいかじ取りを迫られる。

日米の関係強化 経済団体が要望

 米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことを受け、経済団体からは日米の関係強化を求める声が相次いだ。

 経団連の十倉雅和会長は、トランプ氏と安倍元首相の親密な関係を踏まえ、「強固かつ緊密な信頼関係が、石破首相との間でも培われ、両国関係が一層発展していくことを望む」とのコメントを発表した。経済同友会の新浪剛史代表幹事も、首相がトランプ氏と早期に面会するよう要望した。

 一方、米国第一主義への懸念は根強い。日本商工会議所の小林健会頭は「過度な保護主義に陥ることなく、世界経済と自由貿易体制を支える超大国のリーダーとして、調和の取れた政策運営を期待したい」と注文をつけた。新浪氏は「米国は自国を優先した更なる内向き思考が加速する可能性が高く、我が国には、それを前提とした新たな外交政策が必要だ」と訴えた。

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