KADOKAWA、フリーランス「買いたたき」…一方的に雑誌ライターらの作業代引き下げ
読売新聞 / 2024年11月8日 6時29分
雑誌の製作に携わるライターやカメラマンに支払う原稿料などを著しく低く抑えたとして、公正取引委員会が近く、東証プライム上場の出版大手「KADOKAWA」(東京都千代田区)と子会社の下請法違反(買いたたき)を認定し、再発防止を求める勧告を出す方針を固めた。国がフリーランスの保護を進める中で、立場の強い発注者による不当な圧力に対する厳格な姿勢を示す狙いがある。
公取委が違反認定 再発防止勧告へ
一方的通告
子会社は、生活情報誌「レタスクラブ」などを編集する「KADOKAWA
関係者によると、KADOKAWA側は2023年初め、レタスクラブの記事の作成や写真撮影を委託する20以上の事業者に対し、原稿料や撮影代を同年4月号の掲載分から引き下げる通告を行ったという。取引条件の変更に関する事前協議はなく、引き下げ率が数十%に達したケースも複数あったとみられる。事業者には、個人事業主として働くフリーランスが多くを占めていた。
同社側が取引上の優越的な立場を利用し、自らの利益の確保を優先した可能性が高い。ライターらは同社側から継続的に仕事をもらう立場のため、契約の打ち切りや将来的な関係悪化を恐れ、不当な要求に従わざるを得なかったとみられる。
差額支払いへ
同社側は違反を認め、不利益を受けたライターらに対し、本来受け取れるはずだった報酬との差額を全額支払う。総額は今後算出されるが、数百万円規模に上る見通し。公取委は法令順守の徹底を求める勧告案を既に同社側へ伝えており、担当者らの意見を聞いた上で最終的な処分を決める。
フリーランスの保護を巡っては、今月1日に新法「フリーランス取引適正化法」が施行された。ただ、先月までの違反行為は新法の対象外となるため、今回は下請法を適用するという。
KADOKAWAは、角川書店として1945年に創業。出版以外にも映画やゲームなど多様なコンテンツ産業に進出し、2024年3月期の売上高は過去最高の2581億円(連結決算)に上る。レタスクラブは1987年創刊の生活情報誌。現在は月刊で、女性層を中心に人気を集めている。
新法 七つの禁止行為
特定の企業や団体に属さず、個人で仕事を引き受けて収入を得る人が、フリーランスと分類される。ITエンジニアやアニメーター、ライター、通訳などが代表的。リクルートワークス研究所によると、フリーランス人口は副業も含め約390万人(2023年)と、全就業者の約6%を占める。
フリーランスは立場が弱く、仕事を発注する企業などとの間でトラブルが起きやすい。今月1日施行の新法「フリーランス取引適正化法」では、発注者側に「買いたたき」や「報酬の減額」など七つの禁止行為を定め、支払期日を含む「取引条件の明示」などの義務も課した。また、下請法では対象外の建設工事の発注者や資本金1000万円以下の中小事業者などの違反も問えるようになった。
違反した場合は、発注者側に行為の取りやめと再発防止を求める指導や勧告を実施。従わなければ、行政処分として命令を出す。新法を所管する公正取引委員会は勧告や命令を出した事業者について、違反行為の内容とともに、事業者名も公表する方針を示している。
公取委は今年に入り、フリーランスへの違反行為に対して積極的な取り締まりに乗り出している。これまでに、「バーチャルユーチューバー」のデザインをフリーランスに無償で修正させたなどとして、二つの発注者を下請法違反(やり直しの禁止)で勧告した。
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