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改装直後に大雨被害、山形の老舗旅館が再開…支えたのは「いつ頃なら泊まれそうか」などの問い合わせ

読売新聞 / 2024年11月11日 8時0分

復旧した大浴場の露天風呂(5日、山形県最上町大堀の「ゆめみの宿 観松館」で)

 7月の記録的大雨で土砂が流れ込み、復旧作業を進めてきた山形県最上町・瀬見温泉の旅館「ゆめみの宿 観松館」が11日、営業を再開する。年末年始を中心に宿泊予約が相次いでおり、高橋裕社長(41)は「大浴場も庭も全て被災前よりきれいになった。ぜひ楽しんでもらいたい」と語る。(中戸穣)

ショックで言葉出ず

 観松館は1867年創業で、皇族も宿泊した老舗。今の建物は地上6階、地下1階で58部屋あり、露天風呂付きの個室や、地元の旬の食材を使った会席料理などで県内外から人気を集めてきた。

 今年6月には大浴場の改装工事を終え、行楽シーズンに向けて準備を進めていた。

 だが、7月25日の大雨で、旅館の南東側のスキー場跡地で斜面が幅約100メートル、高さ約200メートルにわたって崩落。地下に土砂が流れ込んだ。客やスタッフにけがはなかったが、下水を処理する浄化槽が土砂でやられた。また、最上小国川の水が排水溝から逆流し、改装直後の大浴場が約1・5メートルの高さまで泥水につかった。露天風呂付き個室に源泉を送るためのポンプも故障した。

 高橋社長は当初、「泥さえかきだせば、2~3週間で復旧できるはずだ」と考えていた。だが、浄化槽が全損し、水が流せないことが判明。浄化槽は容量1000立方メートルもの業務用で、業者からは、交換には約1億4000万円の費用と数か月の工期がかかると言われた。「ショックで言葉が出なかった」という。

 それでも、「いつ頃なら泊まれそうか」「復旧後の宿泊予約を今から入れられないか」との問い合わせが相次いだことが支えになった。約60人の従業員や、駆けつけてくれたボランティアと共に、炎天下の泥かきや設備の修理の手配に励んだ。

予約既に2000件

 復旧作業は着々と進み、懸念だった浄化槽も今月6日に設置。従業員は多くが残ってくれた。今後の大雨災害に備えて排水ポンプを新設する準備もしている。

 瀬見温泉旅館組合によると、組合加盟の旅館5軒のうち、大雨後に観松館を含む3軒が休館したが、これで全旅館が営業を再開することになる。

 観松館への宿泊予約は11月に約500件、12月に例年並みの約1500件が入っている。高橋社長は「ひとまずほっとした」と胸をなで下ろす。営業再開に向け、「経営は苦しいが、これまで以上に頑張ってお客さんをもてなしたい」と力を込めた。

 初日の11日はまだ空きがあるという。予約は旅館の公式サイトや各種旅行サイト、電話(0233・42・2311)で受け付ける。

被害3・5億円、CFで寄付募る

 観松館の被害額は、設備の修理や3か月以上の休業の影響で計約3億5000万円に上り、クラウドファンディングサイト「READYFOR」で寄付を募っている。目標額は2000万円。7日時点で290人から約900万円が集まった。寄付金額に応じて、宿泊券や売店の買い物券を贈呈している。寄付は12月5日まで。

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