「自動化・効率化を追い求めるなか、半導体の重要性高まっている」「先進性の高い海外の半導体にフォーカス」…東京エレクトロンデバイス・徳重敦之社長
読売新聞 / 2024年11月11日 9時56分
スマートフォンや自動車、家電などあらゆる製品に欠かせない半導体は、デジタル化の加速や、AI(人工知能)の浸透で重要性が高まっている。東京エレクトロンデバイスは、海外メーカーから半導体を仕入れ、国内企業に販売している。徳重敦之社長に話を聞いた。(聞き手・村瀬駿太郎)
需要右肩上がり
――半導体の事業環境は。
「コロナ禍で需給が
現在は、中国景気が減速して在庫が余って調整期にある。2024年7~9月期から少し動き始めた。10~12月期は少しずつ改善しており、本格的になるのは1月以降かなと思う。
半導体そのものの需要は右肩上がり。たとえば、スマートフォンの性能を良くしようとするには半導体の進化が必要だ。同じサイズでパフォーマンスを上げるには、半導体の集積度を高める必要性が出てくる。だから、ものを作り続けているうちは、右肩上がりになる。
AIでも、データ処理にはできるだけ電力消費を抑えて小さなシステムでやっていくことが必要になる。どうしても米エヌビディアが頭に浮かぶが、そういったところが力をいれて、半導体を開発しなければ、AIも進化しない。だから、全般的に見て右肩上がりになる」
――半導体の重要性が高まっている現状をどうみるか。
「過去にはシリコンサイクルというのがあり、4年周期だと言われた。今はそのサイクルの山谷が小さくなってきている。スーパーサイクルというが、ずっと右肩上がりに山谷が繰り返される。過去と昨今の重要性は、受注の状況をみてもわかるかと思う。以前に比べても大きなものになってきている。
半導体も高度化し、顧客が作る製品も高度化している。特に、自動化、効率化を追い求めるにはどうしても半導体が必要になる。最近は、電気自動車(EV)の市場が軟化しているが、電動化には近づいていくと思う。半導体の重要性は高まっていると考えている」
とどまるところを知らない伸び
――今後の見通しは。
「伸びていくというデータがいろいろ出ている。とどまるところを知らないぐらいの伸びがある。世界中の半導体メーカーが投資をしていて、役割は変わってきているが、あれだけの投資をしているということが裏付けになっていると思う」
――半導体商社の役割に変化は出ているか。
「変化はある。現在、日本の半導体商社で上場しているのは30くらい。過去は日本の半導体メーカーが非常に強く、商社を使って販売していた。それぞれが上場して30くらいになった。
当社は日本の半導体はほとんど扱わずに、先進性の高い海外の半導体にフォーカスして扱っており、メーカーの代わりや技術のサポートができる。国内ではデリバリー、納期に力を入れ、技術のサポートは日本のメーカーが直接顧客に対して行う形でスタートした。
だんだん、日本のメーカーがいなくなって海外勢が強くなり、海外メーカーを扱っている当社のような商社の重要性が高まっている。
海外メーカーも合従連衡で経営統合をしているので、人員が余って大口の顧客に直販をしていこうという動きもある。アナログ系の半導体のような小口の顧客とやり取りが必要な部分については、当社のような海外系を扱える能力がある半導体商社が重要視されることになる」
――半導体の製造工程に使う検査装置の開発に力を入れている。
「商社は、他社の製品を売るので、やはり収益性に限界がある。そこで、プライベートブランドを始めた。具体的には、ウェハーの表面検査装置だ。これまで培ってきた技術で自動化して不良品を少なくする。
自社ブランドを始めるにあたって、メーカーとしては後発だったので、どういう分野にフォーカスするかを考えた時に、まず一つは他社がすでに参入している大きな市場に行っても仕方がないということ。ニッチで、グローバルトップを狙える分野はないかと考えた。
もう一つは、人間がやっている作業を装置や機械に置き換えることができる分野だと考えた。当社には、2000くらいの取引先がおり、ヒアリングをかけた。その中で出てきたのが、表面検査装置だった。顧客のみなさんも非常に苦労していて、当社の技術が使えれば、こうしたことができると説明したところ、作ってもらおうという話になった。
ここを直した方がいいといったサポートを頂き、開発ができた。今後は、これぐらいのウェハーの口径だったら、もっと大きくできるとか。ウェハーだけでなく、ガラスのようなほかの素材の検査装置にも市場を広げていきたい。
自社でものを作ったり、受託を受けて製造したりすると、商社機能と比べて、数倍レベルの収益が確保できる」
――人材の確保について。
「半導体の人材はある程度確保できている。問題は、ITやAIに携わる人材だ。一線級を雇うには、ものすごくお金がかかる。お金でやるか、あるいは育てるか。二つしかないが、どちらかというと当社は育てる方を重視している。いろいろな教育プログラムがあって、離職率は非常に低い。
横浜から渋谷への本社移転を公表すると、採用が早く進むようになった。詳しい理由を調べているが、東京都内で働くというイメージが求心力になっている気がする。渋谷のオフィスの内装は、若手のチームに任せている。そこで愛着を持ってもらえればいいと思っている」
◆徳重敦之氏(とくしげ・あつし) 1986年甲南大経卒、東京エレクトロン入社。2007年東京エレクトロンデバイス取締役に就任。15年から社長。兵庫県出身。
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