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厚生年金加入「106万円の壁」撤廃へ、「週20時間労働」の要件維持…手取り減少のケースも

読売新聞 / 2024年11月8日 23時15分

厚生労働省

 厚生労働省は、パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入する要件のうち、年収106万円以上の賃金要件を撤廃する方針を固めた。「労働時間週20時間以上」の要件は残す。制度改正が実現すれば、保険料負担が生じる「106万円の壁」がなくなる一方で、「週20時間」が壁として残り、賃金水準によっては手取りの減少につながるケースも出てくることになる。

 同省は来年の通常国会に制度改正を盛り込んだ年金改革関連法案を提出することを目指す。

 短時間労働者は、2016年10月から一定の要件のもとで厚生年金の加入対象になった。現在は〈1〉従業員が51人以上の企業などに勤務〈2〉週20時間以上働く〈3〉月額賃金が8万8000円以上(年収換算約106万円)〈4〉学生ではない――などの要件を全て満たすと加入が義務づけられる。

 政府は企業規模要件を撤廃する方針を既に固めており、今後は週20時間以上働けば、厚生年金への加入を義務とする。近年は最低賃金が上昇し、週20時間程度働いた時点で年収106万円を上回るケースが増えていることが背景にある。

 これにより、約200万人が新たに加入対象となる見込みだが、実際は労働を週20時間未満に抑え、加入を避ける人が出てくる可能性もある。

 会社員や公務員の扶養に入っている配偶者は、「第3号被保険者」として自身は社会保険料を負担しなくても年金を受け取り、健康保険にも加入することができる。このため、社会保険料を払わなくて済むよう、働く時間を抑える人もおり、人手不足の要因になっているといわれる。

 106万円の賃金要件の撤廃検討は、将来受け取る年金額を増やし、老後保障を手厚くする狙いがある。一方、毎月の保険料負担が生じて手取りが減るため、反発が出る可能性もある。

 「年収の壁」にはこのほか、所得税が課される「103万円の壁」、従業員が50人以下の企業等に勤める人に社会保険料の支払いが発生する「130万円の壁」などがある。

 第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「『103万円の壁』の見直しは非課税の範囲をより増やそうという話なのに対し、『106万円の壁』はみんなに社会保険料がかかるようにしようという話だ。手取り増という話とは逆行する」と指摘している。

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