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危ういトランプ外交の「ディール」、2期目はイエスマンで固め「米国第一」加速か

読売新聞 / 2024年11月9日 5時0分

トランプ復権<2>

 ハンガリーの首都ブダペストで7日に開かれた欧州政治共同体の首脳会議。会議関係者によると、欧州連合(EU)は開幕直前、「会議参加は、公式ゲストのみ」とする異例の通達を議長国ハンガリーに出した。

 強権的な政治手法で知られるビクトル・オルバン首相が、気脈を通じるトランプ次期米大統領をオンラインで「サプライズ登場」させるとの観測が広がったためだ。EU側としては、欧州の結束を確認する場で、欧州をかつて振り回したトランプ氏が登場することは避けたかったようだ。

 米大統領への返り咲きを決めたトランプ氏に対する欧州各国の警戒感は強い。その筆頭は、ロシアの侵略を受けるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だ。

 バイデン政権は、「力による国際秩序の変更を許さない」としてウクライナに巨額の軍事支援を行ってきたが、「米国第一」を掲げるトランプ氏は支援に後ろ向きだ。米国から遠く離れた欧州の戦争には、米国ではなく、欧州各国が資金を拠出すべきだと主張する。

 代わりに意欲を示すのが、終戦の仲介だ。トランプ氏は退任後もロシアのプーチン大統領と継続的に接触していたと報じられた。プーチン氏とのパイプに自信をみせ、「24時間以内」に戦争を終わらせると豪語する。

 だが、トランプ氏と決別したマイク・ペンス前米副大統領は、「戦争を24時間で終わらせる唯一の方法は、プーチン氏が望むものを与えることだ」と指摘する。損得勘定に基づく「ディール(取引)」で動くトランプ外交には、危うさがつきまとう。ゼレンスキー氏は7日、トランプ氏主導の性急な停戦の動きを念頭に、「戦争の差し迫った終結は損失を意味する」と警戒感をにじませた。

 トランプ外交は、同盟国との信頼関係に重きを置かない。第1次政権では北大西洋条約機構(NATO)脱退をちらつかせ、欧州に防衛費増を迫った。

 1期目は、政権中枢にペンス氏ら共和党の伝統的な外交・安全保障観をもった高官がいた。だが、2期目は、周囲が「イエスマン」で固められる見通しだ。

 第1次政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は2期目のトランプ外交について、1期目より「間違いなく危険だ」と言い切る。米国の外交政策が孤立主義に傾き、国際社会への関与が弱まれば、中国やロシアの伸長を招きかねない。

 「米国第一」の外交政策が、国際秩序を揺さぶる可能性が高い。

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