FRB利下げ 先行きへの警戒を怠らぬよう
読売新聞 / 2024年11月9日 5時0分
米国のインフレに落ち着きが見え、金融政策は緩和方向へと、さらに一歩進んだ。だが、トランプ次期米大統領が掲げる政策は、今後、物価高を再燃させる懸念がある。
米経済への打撃となるだけでなく、日本を含めた世界経済への影響は大きく、警戒が必要だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利を0・25%引き下げて、年4・50~4・75%とすることを決めた。前回9月に金融政策を緩和方向へ転換しており、2会合連続の利下げとなった。
米経済は、コロナ禍での供給制約や、ロシアによるウクライナ侵略の影響などを受けて、歴史的な高インフレに見舞われた。
FRBが、2022年春から急速に利上げを進めた結果、今年9月の消費者物価上昇率は2・4%にまで低下した。
パウエル議長は記者会見で、利下げの理由について、2%のインフレ目標に「かなり近づいた」と述べた。堅調な経済を維持しながら、物価高を沈静化させることに自信を深めているのだろう。
米経済は際立った強さを見せている。24年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比2・8%増となり、10四半期連続のプラスだ。世界経済にも望ましい影響を与えよう。
今後のリスク要因は、トランプ氏が公約に掲げた高い関税を課す計画や大規模な減税策が、物価高を再燃させることだ。
パウエル議長は、「短期的には今回の選挙が政策判断に影響を与えることはない」と述べた。トランプ氏が、来年1月に就任後、政策をどう打ち出すのか不確実性は高い。その影響を分析して、柔軟に対応していくことが重要だ。
FRBの独立性が脅かされる懸念もある。トランプ氏が1期目に景気浮揚を狙い、利下げするよう圧力をかけ続けたからだ。拙速な利下げでインフレを再び加速させる事態は避けねばならない。
また、パウエル議長は、トランプ氏に求められたとしても辞任はしないと明言した。議長の任期は26年5月まである。
一方、日本経済にとっては、トランプ次期政権の経済政策への思惑などから、一時、1ドル=155円近くまで円安・ドル高が進んだことが懸念材料だ。
日本銀行は、経済や物価情勢が見通しどおりに進めば利上げする考えを示している。米経済や為替市場に丁寧に目配りし、政策変更の時期を判断してもらいたい。
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