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南海トラフ臨時情報に翻弄された「日向国」、日向坂46フェスが照らす…経済効果30億円

読売新聞 / 2024年11月9日 22時24分

ひなたフェスのパレード。メンバーを乗せたバスの周囲に多くのファンが集まった(9月、上山陽介さん撮影)=(c)Seed & FlowerLLC

 温暖な気候を生かし、「日本のひなた」として売り出し中の宮崎県で開かれた人気アイドルグループのイベントが話題だ。地元の有志や自治体が総出で歓迎したこともあり、30億円近い経済波及効果をもたらしたのだという。今夏、南海トラフ地震の臨時情報に翻弄ほんろうされた日向国ひゅうがのくにを照らした光に、試算した専門家も「新たな観光の核に育つ可能性を秘めている」と注目する。(浜崎大弥)

♪パレードに人、人、人

 アイドルグループ「日向ひなた坂46」による単独音楽イベント「ひなたフェス2024」。初日を迎えた9月7日、会場のひなた県総合運動公園(宮崎市)はファンでごった返した。2日間の会期中、ひなたサンマリンスタジアム宮崎でのライブや、メンバーによるパレードはにぎわいを見せた。

 イベントは、日向坂46がかつて宮崎でロケをしたことが縁で実現した。スタジアムの天然芝に与える影響を考慮し、これまではスポーツ以外の使用を認めていなかったが、甲子園球場(兵庫県)でグラウンド整備を担う企業からも助言を得て万全の態勢を敷いた。県観光推進課は「スタジアム活用の幅が広がった」とし、「今後もフェスの開催を含めて宮崎の観光振興に協力してほしい」と期待する。

♪おもてなし官民で

 プロ野球・読売巨人軍のキャンプ地としても知られる宮崎だが、9月は観光の閑散期にあたる。前月には政府が南海トラフ地震への注意喚起を行ったばかりで、観光業界は大打撃を受けていた。フェスの恩恵に期待した宮崎市はPR支援費として約900万円を予算化。日向市はグループの協力を得て、観光名所の展望台近くの坂道に「日向坂」の名をつけてファンを迎えた。

 県は27人のメンバーを「みやざき大使」に起用し、ひとりずつ登場する27種類のポスターを作った。市町村ごとのオリジナル仕様とし、ファンに各地を巡ってもらう趣向が評判を呼んだ。

 「おもてなし」のあり方を話し合ったのは、県内の飲食業者や学生らだ。ファンを歓迎する飲食店や過去のロケ地を紹介するマップを作成し、会場には土産品を販売するブースもお目見えした。勉強会を企画した飲食店「若草HUTTE」(宮崎市)オーナーの今西正さん(46)は「『宮崎を好きになった』という声も寄せられ、準備してきてよかった」と振り返る。

 メンバーたちは「宮崎の方々と関わっていく中で、本当の故郷のように特別な気持ちを抱くようになった」と感謝の気持ちをサイトにつづった。

♪聖地化

 「宮崎中が日向坂46の『聖地』になった」。官民を挙げた協業の成果を評価するのは、宮崎大の土屋有准教授(経営情報学)だ。

 会場でファンら約8000人にアンケート調査を行ったところ、3人に2人がフェスを機に宮崎を初めて訪れたと回答。居住地は東京都が21・2%、神奈川県11・3%、埼玉県6・6%――と続き、遠方からの来訪者が目立った。

 宿泊客の多さも特徴で、2泊以上滞在すると答えた人が約7割に達した。「ポスター効果」もあって1人が訪ねる市町村は平均で2・32市町村に上り、すべてのポスターを見にいくと答えたファンもいたという。

 調査結果を基に、フェスによる宿泊客を延べ9万人超、日帰り客を5000人弱と見積もり、ホテルや飲食店などで29億900万円の売り上げ増に寄与したと分析する土屋准教授。「スポーツに加え、音楽イベントも継続的に開催できれば、新たな観光の柱になる可能性がある」と話す。

漫画観光の目玉に~

大分「進撃の巨人」熊本「ワンピース」 

 地元にゆかりのある著名人らと手を組み、新たな観光の目玉を作ろうという動きは各地に広まっている。

 高い壁に守られた都市で暮らす人類と巨人との戦いを描いた人気漫画「進撃の巨人」で知られる漫画家・諫山創さんの出身地、大分県日田市。主人公「エレン」らの銅像がある広場は、壁に見立てたダムを望む場所にあり、ファンの「聖地」になった。市は2021~23年度の経済波及効果を55億円以上とし、「コロナ禍後の観光の復活に大きな力をいただいている」とする。

 大ヒットした漫画「ワンピース」の作者・尾田栄一郎さんの故郷、熊本県も16年の熊本地震を受け、尾田さんからの寄付金の一部を充てて県内10か所にキャラクターの像を置いた。尚絅大(熊本市)の研究チームによると、県庁前にある主人公「ルフィ」の像には、19年の1年間だけで5万5000人が訪れたという。

 ◆日向坂46=アイドルグループ「けやき坂46」として2016年に活動を始め、19年から今の名称に。「AKB48」を手がけた秋元康氏がプロデューサーを務め、NHK紅白歌合戦にも出演した。メンバーには九州出身者もいる。

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