ドコモ、スポーツ・ドラマの動画配信やアイドル育成などエンタメ注力…若年層の取り込み図る
読売新聞 / 2024年11月10日 8時42分
NTTドコモがエンターテインメント事業に注力している。スポーツやドラマの動画配信、アイドル育成などが主な内容だ。携帯電話端末や料金プランは通信各社で横並びとなる中、独自コンテンツによって若年層の取り込みを図り、顧客基盤を広げる狙いがある。
10月下旬に東京都内で開かれた記者会見。ボクシング・スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥選手の横に、ドコモの前田義晃社長が並んだ。12月にドコモの映像配信サービスで防衛戦を独占生配信する。
「井上選手の試合はドコモの中で最も利用者を獲得できるコンテンツだ。通信や金融サービスとの連携を強めて、利用者を増やしたい」。前田社長は意義を強調した。放映権料は「数億円」(テレビ局幹部)とも言われる注目の一戦。生配信はドコモ契約者でなくても無料で視聴できるが、ドコモは有料サービスへの誘導を狙う。
6月に社長に就いた前田氏は、タワーレコードの買収や音楽配信サービスを手がけるなど、社内きっての「エンタメ通」(幹部)とされる。ドコモは2020年12月にNTTの完全子会社となった後、携帯料金の引き下げに経営資源を投じてきた。割安プランの普及が一巡し、エンタメ事業で反転攻勢を狙う。
10月には、吉本興業グループとの合弁会社「NTTドコモ・スタジオ&ライブ」が制作したオーディション番組の放送がTBS(関東ローカル)で始まった。歌手デビューを目指す女性らの共同生活を追う内容だ。
23年設立のスタジオ&ライブは映像制作やアイドル育成を手がける。ドコモが運営するアリーナでのライブ開催や、自前のIP(知的財産)の海外展開にも力を入れる。吉沢啓介社長は「当社がなければドコモと一生関わりを持たなかった層との接点を作っていく」と話す。
ドコモの契約者は中高年層が多く、若年層の開拓が課題となっている。独自コンテンツを開発した上で、動画配信やライブ開催も手がけることで、通信や決済サービスなどとの相乗効果を見込む。
ドコモは近年シェア(市場占有率)争いで苦戦が続く。00年代初めに6割近くを占めたシェアは、23年度は首位ながらも34・7%にまで落ち込んだ。
ドコモは競合他社が注力する金融事業の拡充を急ぎつつ、エンタメ事業で差別化を図る考え。23年度のエンタメ事業の収入は2215億円で、非通信部門の2割を占めた。27年度に4割増の3100億円に引き上げる目標を掲げる。
MM総研の横田英明取締役副所長は「米アマゾンやネットフリックスが勢いを増すエンタメ市場で、いかにドコモらしさを打ち出せるかがカギになる」と指摘する。
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