損保カルテル 悪しき慣行となれ合いを断て
読売新聞 / 2024年11月10日 5時0分
企業向けの損害保険を巡り、損保大手4社による違法な価格調整が常態化していた。損保業界と金融庁などは、
公正取引委員会は、企業向け共同保険などで価格カルテルや入札談合を繰り返していたとして、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険を独占禁止法違反と認定した。
計20億7164万円の課徴金納付命令を出し、再発防止を求める排除措置も命じた。
公取委は不適切な約600の案件を把握し、私鉄大手の東急や仙台国際空港など社会的な影響力の大きい契約先に絞り調査した。
2019年以降、9件の損害保険で価格調整などが行われていたことを確認した。違反行為での売上高は約540億円に上った。
違法な取引の広がりや、法令を軽視した企業風土、統治体制の不全は深刻で、許されない。
企業向け保険は、火災や災害が起きた際の補償が巨額になりやすく、複数の損保会社による共同保険の仕組みで契約されることが多い。主に大きな設備を持つインフラ企業や製造業が対象となる。
ただし、契約が共同でも、損保会社から企業側への保険料の提示は個別に行うことが原則だ。
だが、各社の営業担当者らは、電話やSNS、カラオケ店での会合を通じて情報交換を重ね、取引先に割高な保険料を提示するための調整を行っていた。
損保業界は大手への寡占が進んでいる上、共同保険という仕組みが価格調整を助長しやすい。
公取委は再発防止に向け、今回、個別事案について適正な取引の基準を公表する異例の対応を取った。契約先企業が入札などの競争を求めた場合、損保会社による事前の価格調整は、原則として独禁法上、問題になると強調した。
一方、企業側が具体的で明確な条件を示し、それを前提に引き受け割合などの調整を行った場合、直ちには問題にならないとした。損保各社は公取委の基準を踏まえ社内教育を徹底するべきだ。
また、公取委は、調整の要となってきた幹事会社を通して契約するのではなく、契約先である企業の立場に立って保険会社の選定や交渉にあたる「保険仲立人」の活用を選択肢として挙げた。
金融庁は、企業の導入を後押しする施策を検討してほしい。損保側も業界を挙げ、共同保険の改革案を練っていくことが重要だ。
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