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ガザの危機 人道支援まで禁止する非情

読売新聞 / 2024年11月10日 5時0分

 飢えや病気、けがに苦しむ人々への支援を断ち切り、見殺しにするのに等しい。イスラエルの決定はあまりにむごく、憤りを禁じ得ない。

 イスラエル国会は、パレスチナ自治区ガザなどで人道支援を行う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対し、国内での活動を禁止する法案を可決した。1月下旬までに施行される。

 さらにネタニヤフ政権は、UNRWA職員の安全を確保するとした国連との合意を破棄した。

 職員がイスラエルで活動できなければ、隣接するガザへの支援物資の搬入や配給ができず、病人や負傷者の治療も行えなくなる。

 ガザでは1年以上も戦乱が続き、200万人超の住民が、住む場所を追われて死と隣り合わせの生活を強いられている。命綱とも言えるUNRWAの活動が止まれば、住民は一層窮地に陥る。

 国連安全保障理事会では、イスラエルを支援する米国を含め、15理事国すべてが懸念や非難を表明した。イスラエルは重く受け止めなければならない。

 UNRWAは1949年に発足し、前年のイスラエル建国で居住地を奪われた人々と子孫を支援してきた。だが、イスラエルは、ガザのイスラム主義組織ハマスが、UNRWAを隠れみのにしていると主張し、解体を求めていた。

 ハマスとUNRWAが無関係だったとは言い難い。昨年10月のハマスによる越境攻撃に、UNRWA職員が関与したことが明らかになった。UNRWAは内部調査に基づき、職員9人を解雇した。

 UNRWAは国連の独立調査団からの勧告を受け、職員の管理や運営で改革を進めている。

 にもかかわらず、イスラエルは不信を募らせ、UNRWAがガザで行うポリオ(小児まひ)ワクチン集団接種の会場を攻撃し、子供を含む6人が負傷した。非人道的な行いは目に余る。

 イスラエルはUNRWAとは別の組織が支援を担うべきだと主張している。だが、他の国連機関などはガザ内部に支援を行き渡らせる人材やネットワークを持ち合わせていない。イスラエルの提案は非現実的である。

 米国のバイデン政権は、イスラエルへの軍事支援を続け、ガザの人道危機を止められなかった。米大統領選で圧勝したトランプ前大統領は、イスラエル寄りの姿勢が際立っている。

 パレスチナ問題が置き去りにされ、中東情勢がいっそう悪化する事態を強く懸念する。

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