宍道湖の無許可埋め立てに初の行政代執行、江戸期に認められた「私有地」でも無許可埋め立ては禁止

草刈りや樹木の伐採のため、不法造成地に入る作業員（１１日午前、松江市で）

　松江市玉湯町で宍道湖の湖岸が許可なく埋め立てられ、所有者側が撤去に応じないとして、国土交通省中国地方整備局は１１日、埋め立てられた約１６５０平方メートルについて、行政代執行による土砂などの撤去を始めた。宍道湖には、不法な埋め立て地がほかに４か所（計約５６００平方メートル）あるが、行政代執行は初めて。

　宍道湖は、江戸時代に松江藩が開墾策として湖水面の所有権「水代（みずしろ）」を認めたため、浅い湖底の一部が私有地として不動産登記されている。湖水面の所有権を認めるのは全国でも珍しいという。一方、湖の防災・治水機能を守るため、河川法に基づき、私有地でも国の許可なく埋め立てることは原則禁じられている。

　今回撤去されるのは、湖の南側にある住宅地近くで１９９５～２０１５年に造成された埋め立て地。幅８８メートル、奥行き６～２５メートルで、水代のほか国有地も含まれ、コンクリートブロックや階段、ベンチが設置され、松などが植えられている。

　水代部分は造成後の１６年に所有者が変更されており、同整備局は、以前と現在の所有者に土砂などの撤去を繰り返し求めたが、いずれも対応しないため、今年１０月に行政代執行法に基づき、強制的に撤去すると通知していた。

　１１日午前１０時頃、同整備局出雲河川事務所の児子（にご）真也所長が現地で行政代執行の開始を宣言。作業員が植栽の伐採などを始めた。作業は来年度までかかり、費用は所有者側に請求する。