長野でおなじみのスーパー「ツルヤ」、ブランド力を武器に隣県に進出…戦略は「2・6・2」
読売新聞 / 2024年11月12日 8時47分
長野県のスーパー「ツルヤ」が群馬県で商圏拡大に力を入れている。2020年11月の前橋南店(前橋市公田町)から4年間で5店舗を出店し、週末などは多くの買い物客でにぎわう。長野のブランド力を武器に、地元に並ぶ「第2の拠点化」を目指している。(井上健人)
■かんら店先月開店
先月11日に県内5店舗目としてオープンしたかんら店(甘楽町福島)。国道254号沿いの店を7日に訪れると、信州特産のリンゴを使ったジュースやおやき、種類も豊富なオリジナルジャムなど様々な商品が取りそろえられていた。買い物客は物珍しさに立ち止まり、夕食用の生鮮食料品や総菜と一緒にカゴに入れる人も。妻、長男と初めて来店したという富岡市の会社員(33)は「清潔感のある店内と品ぞろえのおかげで買い物が楽しかった。手頃な商品もあるので日常的に来たい」と話していた。
かんら店はツルヤとして最大規模の売り場面積3679平方メートルを誇る。敷地内にはサンドラッグ、ダイソーがあり、今月下旬には無印良品もオープン。駐車場も621台が収容可能だ。町内にはベイシアフードセンター富岡甘楽店や食料品を扱うドラッグストアもあるが、掛川健三社長(75)は「競争が厳しいところに出店することで、自社の欠点と強みが認識できる」と話す。県内では現在、ベイシア(前橋市)やフレッセイ(同)、とりせん(館林市)などの県内資本のほか、ベルク(埼玉県鶴ヶ島市)など県外スーパーも参入し、しのぎを削っている。
■幅広い選択肢
ツルヤの強みは、自社のプライベートブランド(PB)と食品メーカーの商品、地元企業が手がける地域の特産品を「2・6・2」の比率で用意し、幅広い選択肢を買い物客に提供することにある。掛川社長は「価格競争ではなく、特徴ある商品やサービスを提供できるかが勝負」と意気込む。
今後も年1店舗のペースで県内出店を計画しており、長野県の37店舗と同じ規模に拡大したいという。
群馬でも業績好調…掛川社長一問一答
2023年6月末の売上高が1239億円と、長野県の小売業でトップの売上高を誇るツルヤ。高品質のPBなど充実した品ぞろえで、同県軽井沢町の店舗には全国から客が訪れる。今後の経営戦略を掛川健三社長に聞いた。
――群馬進出の理由は。
人口減が進み、商圏を一つの自治体だけに捉えない方がいいと判断しました。長野県には現在、37店舗あります。営業本部(本社機能)の小諸市など拠点は県東部。長野と群馬の中心ともいえ、物流を考慮すると長野の南部より群馬の方が近いんです。
――PB誕生の経緯は。
数十年前、地元の農家が台風でリンゴが落ちて困っていました。メーカーに相談したところジャムやジュースならできるといい、商品化しました。日常的に飲んでほしいとの願いから手頃な価格にしています。
――店や売り場作りで心がけていることは。
長野と群馬は車社会で買う量が多く、1人当たりの単価も高いです。東京のスーパーは1回2000円ほどですが、うちは1回3000~4000円。カートを使うことが多いので、行き来しやすいように陳列棚の両側に60センチずつ確保するなどしています。
――かんら店以前の群馬の4店舗の業績は。
おかげさまでトップクラスの長野中央店(長野市)、なぎさ店(松本市)と同じ水準で、週末は3000人の来客があります。
――かんら店への期待は。
幹線道路沿いで利便性が良いので、高崎市や安中市、富岡市からも来てもらえればと想定しています。長野では、ブリやコイ、カレイなどを食べて家族で年越しを祝う「年越し魚」という風習があります。かんら店の周辺地域でも浸透するか試してみたいですね。
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