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強制不妊救済法 長い苦しみへの補償を確実に

読売新聞 / 2024年11月12日 5時0分

 「公益」の名のもと、人の命に優劣をつけた事実は、あまりに重大だ。国や自治体は被害者の苦しみと真摯しんしに向き合い、確実な救済に力を尽くさなければならない。

 旧優生保護法で不妊手術を強制された被害者を救済するため、国が補償金を支払うことを定めた強制不妊救済法が成立した。

 手術を受けた本人に1500万円、その配偶者に500万円を支払うほか、人工妊娠中絶の手術を受けた人にも200万円を支給するという内容だ。

 1948年に施行され、96年まで存続した旧法は、「不良な子孫の出生防止」を目的に、障害や遺伝性疾患を理由とする不妊手術を認めていた。都道府県や医師が適否を判断し、約2万5000人が手術を強いられたとされる。

 旧法を巡って被害者が起こした訴訟で、最高裁は今年7月、個人の尊厳や法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断した。この判決を受け、裁判に参加していない人たちも救済するために作られたのが、今回の新法である。

 被害者の中には、偏見を恐れて今も声を上げられない人がいるだろう。障害などの事情で、救済法の内容が十分に伝わっていない可能性もある。国や自治体は、対象となる人たちに向け、丁寧に情報を発信することが大切だ。

 一部の被害者については、手術記録などの資料が都道府県に残っている。このため、訴訟の原告弁護団は、プライバシーに配慮しながら、行政から対象者に個別の通知を出すよう求めている。

 個別の通知には、戸籍を管理する市町村や病院、被害者が生活する障害者施設などとの連携が欠かせない。被害者は高齢化が進んでいる。各自治体で、適切な通知の方法を模索することが重要だ。

 この問題では2019年、国が被害者に320万円の一時金を支払う制度が作られている。

 今回の救済法により、一時金に加えて、新たに補償金も受け取れるようになる。すでに一時金を受け取った人が、自分は補償の対象外だと誤解しないよう、自治体などで周知に努めてもらいたい。

 旧優生保護法に基づく不妊手術の強制は、戦後最大の人権侵害だと言われる。今後、同じような過ちを繰り返さぬよう、歴史に刻まねばならない。

 国は今後、過去の手術や差別の実態を検証するという。被害者を苦しめた旧法の廃止まで、なぜこれほど長い時間を要したのか。社会全体で振り返る必要がある。

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