侍ジャパンの戦いを鹿取義隆さんが占う、ユーティリティーそろう内野の強み…13日にプレミア12初戦
読売新聞 / 2024年11月12日 17時2分
野球の日本代表「侍ジャパン」が13日に国際大会「ラグザス プレミア12」1次ラウンド初戦のオーストラリア戦を迎え、大会2連覇をかけた戦いが始まる。第1回プレミア12と第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表の投手コーチを務めた鹿取義隆さん(元巨人、西武)が侍ジャパンの戦いを展望する。(デジタル編集部)
週末に行われたチェコとの強化2試合を見た。投手は状態が良くなってきた。実戦から遠ざかっていた選手もいたが、投げるうちに感覚を取り戻していた。打者は
球数制限ないが、リリーフ陣もバランス良し
先発陣は戸郷翔征(巨人)、高橋宏斗(中日)、才木浩人(阪神)、13日の初戦に先発予定の井上温大(巨人)、あとはチェコとの第2戦で先発した早川隆久(楽天)、北山亘基(日本ハム)といる。
WBCと違って投手の球数制限がない大会だ。先発の調子が良ければ長く投げさせる。5~6イニングを間違いなく投げてくれれば良いが、そうならなかった時のために「第2先発」も用意しておかなければならない。リリーフする最初のイニングがちょっと心配だが、投げ始めれば問題はないと思う。相手打者が右か左かにもよるが、左腕の隅田知一郎(西武)もいる。誰を後ろに回すかが課題となる。
中継ぎは連投がしんどくなるが、メンバーはそろっている。右3枚、左2枚とバランスがいい。今年からリリーフに転向した藤平尚真(楽天)はすごく内容が良くなった。球速も速くなり、自信をもって投げているのがいい。クローザーは大勢(巨人)で決まりだろうが、右のサイド気味からくる強いボールは初見のバッターでは簡単には打てない。
ピッチクロックが採用され、走者なしで20秒。慣れていくしかないが、普通のテンポで投げれば意外と長い時間だと思う。
「大砲」不在も、積極性のある上位打線
野手はユーティリティープレーヤー(複数のポジションをこなせる選手)がそろった。誰でも、どこでも守れ、特に内野はほぼ全員がそういう状態で、バランスがかなりいい。打順を組むときにも左を並べる、あるいは右左ジグザグにするなど、組み合わせが広がる。今までやりたくても出来なかったことだ。どちらかと言えば専門職の方が多かったが、今年のチームは違う。内野のバランスで見れば、歴代の侍ジャパンのメンバーの中でもかなり強いチームだ。
直前の辞退者もあって、いわゆる「大砲」タイプがいない。強化試合の4番には牧秀悟(DeNA)と森下翔太(阪神)が座ったが、今回のチームに関しては誰が入ってもいい。強いチームは1、2、3番が良ければ後がつながっていく。所属チームではクリーンアップを張って、ホームランを打てる選手がそろっているので、4番はその時の状況と選手の調子で決めていけばいい。上位の1番桑原将志(DeNA)、2番小園海斗(広島)、3番辰己涼介(楽天)は強化試合2試合で固定された。3人とも、見るバッターではなくて初球から積極的に行くタイプなので、いい打順だと思う。
国際大会では絶対に必要な「足の切り札」
追加招集された清宮幸太郎(日本ハム)は、内野も外野も指名打者(DH)もでき、使い勝手のいい選手だ。相手先発投手のデータを見て左打線が良いとなればチャンスもある。
佐野恵太(DeNA)もDH候補だが、同じ左打者でどちらの守備力がいいのか、ユーティリティーの多さを生かしてDHもうまく使えれば、打線はさらに活性化するだろう。
そして「ポスト周東佑京(ソフトバンク)」として入った足のスペシャリスト、五十幡亮汰(日本ハム)だ。強化試合では代走で出て、やや強引な面もあったが、二盗、三盗を立て続けに決めて、内野ゴロで1点をもぎ取った。外国の投手はクイックがうまくなく、隙があるからこういう国際大会では足の切り札は絶対に必要だ。
「6分の2」と狭き門の1次ラウンド…失点抑えたい
大会方式が変わって、1次ラウンドでは前回は3グループ各4チームから上位2チームが2次ラウンドに進んだが、今大会では2グループ6チームから各2チームとなった。短期決戦では何が起きるか分からず、メキシコで始まったA組ではアメリカが2敗目を喫した。どのチームが勝ってもおかしくない。B組の日本も2敗するとしんどくなるし、同勝敗で並ぶとTQB(トータル・クオリティー・バランス)(※)の争いになるので、なるべく失点を少なくすることが肝要だ。日本は投手力が良いので、そのストロングポイントを生かして優位に立ちたい。
メキシコラウンドの映像を見ていて、日本の投手レベルの高さを改めて感じた。スピードで負ける投手は何人かいるが、変化球やストライクの確率は全く違う。メジャーの選手がいないこともあり、強引に振る打者が多く、守りではエラーも普通に出ていた。攻守で日本のレベルは高いが、短期決戦の持つ独特の雰囲気だけは肝に銘じておくべきだ。
いよいよ開幕戦。初戦の入り方はどのチームにとっても難しい。データもそこそこそろっているので、相手チームの現状をしっかりと把握しながら、思い切って大会に入りたい。
※TQB(トータル・クオリティー・バランス)=得点÷攻撃イニング数から、失点÷守備イニング数を引いた数値
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