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世界のレースに果敢に挑む日本馬、過去最多92頭…「馬体重20キロ減」などコンディション維持に難しさも

読売新聞 / 2024年11月13日 5時0分

 海外競馬に挑戦する日本馬が増加傾向にあり、中央所属では今月5日現在で過去最多だった昨年を上回る延べ92頭が遠征した。国内でも高額賞金のGI競走は多く実施されているが、なぜ海を渡る馬が増えているのか。

敗戦教訓に ノウハウ蓄える

 日本中央競馬会(JRA)によると、同会所属で初めて海外へ遠征したのは、1956年の日本ダービーなどを勝利したハクチカラという牡馬ぼばだった。58年から米国に長期で滞在し、59年のワシントンバースデーハンデという競走で優勝。JRA所属馬として外国で初勝利を挙げた。

 環境の変化に敏感なサラブレッドにとって、海外でコンディションを維持するのは容易ではない。出国前には普段過ごす厩舎きゅうしゃを離れて約1週間の検疫に入り、現地へ向かう移動の機内では立ったまま。遠征地にもよるが、輸送に丸1日以上かかる場合もある。芝のGIを9勝したアーモンドアイも2019年にアラブ首長国連邦(UAE)のレースに挑戦した際には苦労したといい、担当だった根岸真彦調教助手は「検疫と輸送で馬体重が20キロも減ってしまった」と海外遠征の難しさを語る。帰国時にも検疫があり、国内のレースよりも疲労の回復が遅くなることが多いため、果敢な挑戦にはリスクが伴う。

 日本馬はハクチカラ以降、フランス競馬の世界最高峰レース、凱旋がいせん門賞など欧米の主要競走に挑戦し、はね返されてきた。だが、敗戦から好走へのノウハウを少しずつ蓄え、1998年のモーリスドゲスト賞(仏GI)で武豊騎乗のシーキングザパールが日本馬で海外GIを初制覇。以降もメルボルンカップ(豪)や米国競馬の祭典・ブリーダーズカップで勝ち、ドバイワールドカップなど中東の高額賞金GIでも優勝した。日本馬が結果を出せるようになると、同レベルの馬の陣営にも挑戦しようとするムードが高まり、その好循環が遠征の増加に寄与している。

賞金15億円

 海外のレースを走るには、高額な遠征費用も障壁となる。海外競馬の登録業務を代行している公益財団法人「ジャパン・スタッドブック・インターナショナル」(東京)によると、中東諸国や香港の主催者は馬の輸送費のほか、馬主や調教師、騎手らの渡航費や宿泊費も負担する。待遇が手厚い背景には日本や欧米の有力馬を招待し、自国の競馬の格式を上げたい意向が働いていると指摘する関係者もいる。また、世界最高賞金のサウジカップ(GI)の1着賞金が1000万ドル(約15億3000万円)など、中東ではオイルマネーを原資とした高額賞金競走が複数あり、これらの地域で特に日本馬の出走が増えている。

「子が活躍」種牡馬 海外から注目

 日本馬の海外での活躍は生産界にも好影響を与えている。2023年のドバイシーマクラシック(GI)で日本のイクイノックスがレース史上最速のタイムで圧勝し、国際競馬統括機関連盟が定めた世界ランキング1位に輝いた。イクイノックスが日本馬のレベルの高さを証明したことで、同馬の父、キタサンブラックが種牡馬しゅぼば生活を送る牧場・社台スタリオンステーション(北海道安平町)の徳武英介場長は「イクイノックスという素晴らしい馬を送り出したキタサンブラックについて、海外からも問い合わせが多く来ている」と話す。イクイノックスも同牧場で活動しており、日本の種牡馬の子が世界で走るケースがさらに増えそうだ。

 一方、有力馬が海外へ渡れば、同時期に行われる国内のレースのレベル低下につながる懸念もある。JRAには、日本の強豪馬が国内の競走に出走したくなるよう、魅力的な競走を引き続き提供していく取り組みも求められている。

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