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素晴らしき山あいの紅葉や雪景色…JR北上線全線開通100年、ローカル線維持に地域と連携不可欠

読売新聞 / 2024年11月14日 17時0分

 秋田、岩手両県を結ぶJR北上線が15日、全線開通から100年の節目を迎える。山あいの紅葉や雪景色など四季折々の景色が楽しめるが、利用者はピーク時の約2割まで減少するなどローカル線を巡る現状は依然として厳しい。有識者は鉄道維持には地域との連携も不可欠だとしている。(熱田裕雅)

 7日午前、横手駅ホームに1両編成の列車が滑り込んだ。快速の北上駅(岩手県北上市)行きだ。

 姉と日帰り旅行をするという横手市のパート従業員女性(53)は「100周年と聞いたので乗ってみようと思った。いつも移動は車なので、きょうは紅葉や湖など車窓の景色を楽しみたい」と笑顔を見せ、列車に乗り込んだ。

 北上線は1924年11月15日、横手駅と黒沢尻駅(現・北上駅)の頭文字を取って、「横黒線」の名で開通し、66年10月に現在の北上線に改称された。全国的にも珍しい温泉付きの駅舎「ほっとゆだ駅」(岩手県西和賀町)のほか、沿線では、鉱山跡を巡るトレッキング(最寄り駅・岩沢駅など)や錦秋湖(同・ゆだ錦秋湖駅)でカヌーなどを楽しめる。

 ただ、97年の秋田新幹線開業や高速道路の整備などが進み、鉄道離れは加速している。

 JR東日本によると、北上線の平均通過人員(1キロあたりの1日の利用者数)は92年度の1157人をピークに減少傾向で、昨年度は77%減の266人に落ち込んだ。21~22年度に約14億~15億円だった赤字額も昨年度は16億円を超えた。

 こうした危機感から昨年11月、無料乗車キャンペーンが行われ、配布初日に用意した5000枚の無料乗車票が即日でなくなるなど潜在的な需要は確認された。

 今後は日常的な利用者をどう増やすかが課題で、キャンペーンを企画したJR東日本や沿線3自治体などでつくるJR北上線利用促進協議会の担当者は「沿線地域の人口が減少する中で、利用を増やすのは厳しい。沿線の観光需要の掘り起こしを進め、利用者増加につなげていきたい」と話す。

 公共交通に詳しい関西大の宇都宮浄人きよひと教授(交通経済学)は「鉄道は車と比べ、大量輸送が可能で正確な時刻で運行し、渋滞や交通事故のリスクを減らせる信頼ある輸送機関」と強調する。その上で、「JR単独での鉄道維持には限界が来ている。地域も一緒になって支え、持続可能な街づくりを進めるためのツールとして、鉄道のあり方を考えることが大切」と指摘する。

 ◆JR北上線=JR横手駅と北上駅間を結ぶ全長61・1キロ・メートルの路線。秋田県内の横手、相野々、小松川、黒沢の4駅を含め計15駅ある。横手から北上駅までの所要時間は約1時間20分。

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