廃止検討の「政策活動費」、そもそも必要だった? 識者は断言「選挙に使われ、止めても抜け道」
J-CASTニュース / 2024年11月12日 20時29分
石破茂首相
自民党などの裏金問題を受けて、石破茂首相は、裏金の温床との批判もある「政策活動費」を廃止する方針を固めたと毎日新聞が報じた。
では、なくてもいいものなら、これまでなぜ使っていたのだろうか。その使われ方などについて、政治資金に詳しい識者に話を聞いた。
「なくても問題ないお金なら今まで何に使っていたの?」
政策活動費とは、政党が幹部らに支出する政治資金を指す。資金管理団体ではなく、議員個人が対象になる。政治資金規正法では、議員個人への金銭などの寄付は原則禁じられており、いわば例外的な措置だ。
その使途としては、党勢の拡大や政策立案、調査研究のためとされている。使途を公開する義務はなく、いわばブラックボックス状態だ。その理由としては、個人のプライバシーや企業・団体の営業秘密を侵害するなどが挙げられている。
政党では、自民党の支出が多くを占めており、2022年には、二階俊博氏が幹事長時代に5年間で約50億円を受け取っていたと、大きな話題になった。
自民党の裏金問題では、政治資金パーティーからのキックバック分不記載について、「政策活動費という認識だった」との釈明に使われ、批判された。政策活動費は、使い切らないと脱税になると、その問題点が指摘されている。
24年10月の衆院選では、裏金問題の余波で、与党が過半数割れに追い込まれたともされる。石破首相は、一部野党からの要求も受け、政策活動費を廃止する方針を固めたと、毎日新聞の11月11日付ウェブ版記事で報じられた。
石破首相は第2次石破内閣発足直後同日夜に開いた記者会見で、自民党として「廃止を含めて、白紙的な議論をすることを決断した」として、「各党各会派におきまして御議論いただき、早期に結論を得るべく、私自身、誠心誠意尽力する」と前向きな姿勢を示している。翌12日の政治改革本部の初会合では、政策活動費の廃止を含めて「率先して答えを出したい」と年内の法改正に意欲を示した。
こうした報道を受け、政策活動費について、ネット上では、「なくても問題ないお金なら今まで何に使っていたの?」との疑問が出たほか、「新たな抜け穴を思い付いたのか」「使った明細を公開すれば良いんだよ」と冷ややかな声が上がっていた。
政治資金に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授(政治学)は12日、J-CASTニュースの取材に対し、政策活動費について、「いらないわけではないと思う」として、その使途についてこう話した。
「遊説費などに分散していけば、今までと同じように捻出」
「実態は、よく分かっていませんが、一般的には、選挙の支援に使われているとされています。ある候補に政策活動費を渡したことが表に出れば、渡していない候補と比べられて党内で問題になります。また、保守系無所属の候補が当選すれば入党してもらえるよう、公認されていなくても出すことに使われます。党勢の拡大というのは、意味が広いので、そう言われているわけです。もっとも、世論調査を内密に行うなど実際に調査研究に使っているケースもあります」
実際、過去の報道では、政策活動費が選挙で地元の人たちとの飲食代などに使われていたとのケースも挙げられていた。
たとえ政策活動費が廃止されたとしても、その分の政治資金は捻出できると岩井名誉教授は指摘する。
「遊説費などに政策活動費を分散していけば、今までと同じように捻出できるとされています。いわば抜け道になりますね。国民運動費などと名称を変えることも考えられると思います。実質的に裏金を作っていると言え、こうしたことは野党も同じです」
裏金がはびこらないようにするためには、2つの方法が考えられるとした。
「1つは、政治資金についてのチェック機関を作ればいいということです。アメリカなら連邦選挙委員会、イギリスなら選挙委員会がそうで、イギリスでは、告発権限もあります。2つ目は、政治資金収支報告書をデジタル化することです。お金の流れをAIでも分析することができるようになり、変な使い方が減ります。まとめれば、収支チェックと徹底した透明化、この2つをきちっとやらないといけないですね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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